北朝鮮のテロ支援国家指定が、あっさりと解除された。
中曽根外相は10日夕、ライス米国務長官と電話で話し、「協議後、日本側関係者は、一両日中に米国が指定解除に踏み切ることはないとの見通しを示した」(東京新聞11日)。ところが、翌11日の夜11時にブッシュ大統領が麻生総理に指定解除を伝えてきたという。同盟国日本に対してこの仕打ちである。
北朝鮮問題で助けてもらわなくてはならないからと、イラク派兵でも何でもアメリカの言うことをきこうと主張してきた政治家は、これをどう見ているのだろうか。
北朝鮮は、肝心な原爆の数量や核兵器製造施設、プルトニウム貯蔵施設、ウラン濃縮の進展度もいっさい申告していない。寧辺の原発の無能力化と申告をしただけだ。4月、ヒル国務次官補はそれだけで指定解除しますよと北朝鮮に約束していた。
いくらなんでもそれじゃ甘すぎると批判されて、8月、検証できなければ指定解除しないと方針転換したが、今回はあっさりと土俵を割った。北朝鮮が今回認めた検証というのは、寧辺に限ったことで、未申告施設の立ち入りは「相互の合意のもとで行なう」のだから、北朝鮮に拒否権がある。北朝鮮が受け入れるわけがない。
「米、検証手続きで譲歩」「北の瀬戸際戦術許す」(読売)、「事態悪化防止へ譲歩」「ブッシュ政権末期 つじつま合わせ」(毎日)という見出しで分るように、取り引き自体は、誰が見ても「北朝鮮の勝ち」。
というより、アメリカが勝手に一人で転んでいるかっこうだ。
これは11月4日の大統領選挙の前に6カ国協議を開きたいというアメリカの思惑が働いたと言われる。せっかく積み上げた6カ国協議の積み木をぶち壊されるとなれば、何とか機嫌を取ろうということになる。特にアメリカの場合、大統領が任期1年を切ると、通常の政治とは別の要素が入ってくる。
大統領としての実績を遺そうと、レガシー・メーキング、直訳すると「遺産作り」に邁進するためだ。
北朝鮮は、「言うことを聞いてくれないなら暴れるぞ」とやっていれば、相手はこけてくれる。今回も、北朝鮮の瀬戸際外交が成功した例として記録されるだろう。
こういうのが繰り返されるから、《将軍様の核外交はすごい!》となるわけだ。