感動の素粒子論

takase222008-10-08

私の主な読書時間は通勤列車の中だが、仕事で読まなければならない本が多く、読みたい本がなかなか進まない。
ビッグバンに関する本が3週間経っても読み終わらずにカバンに入っていた。3人のノーベル物理学賞受賞の発表のときは、偶然、クォークに6種類あり、物質には反物質があるという説明にさしかかっていたところだったので、感慨深かった。彼らは、素粒子の基礎的な原理に関わる、すごい業績を挙げていたことがよく分った。
では、素粒子という超ミクロな世界が、なぜ宇宙がどうしてできたのかという超マクロな話に関係するのか。
宇宙の起源については、無から生じたというビッグバン理論がすでに定説となっている。1940年代、物理学者のガモフが「宇宙は超高温、超高密度の火の玉ではじまった」とのアイディアを出した。
ごく小さな点から膨張した火の玉は、はじめはモノではなく、エネルギーそのものだった。それがものすごい速さで膨張する。次第に温度が下がる。その過程で何度も「相転移」がおきる。相転移というのは、氷が水になり、さらに蒸気になるようにがらりと姿を変えていくことだ。
まずは質量のない素粒子(例えば光子)、次に質量のある素粒子(ある種のクォーク)ができてくる。ここではじめて宇宙に「物質」が生じたのだ。
誕生後100万分の1秒後の宇宙は、温度が5兆度(これでもかなり下がっている)。高温、高密度のクォークの「スープ」だったという。つまり宇宙創成期は素粒子の世界。だから、素粒子の研究は、宇宙の誕生の謎に迫ることを意味するのだ。
ちなみに、クォークが集って陽子や中性子ができるのだが、その陽子と中性子が集って原子核を作り始めるのが宇宙誕生3分後。温度はだいぶ下がって10億度。
原子核が電子をつかまえて原子ができたのは、ずっと後で、ビッグバンから38万年もたってからだったという。そのときの宇宙の温度は3000度で、人間がなんとか想像できる熱さだった。そして水素原子とヘリウム原子が宇宙に広がっていって、星の元になっていく。
そんなところから、銀河系、太陽、地球ができ、生命が生じ、現在にいたるのだ。
2003年2月、NASAが宇宙の年齢が137億年±2億年と発表し、これがいま世界に認められている。(写真は、誕生から38万年後の宇宙の最も古い光の分布図。 赤が高く、青は低い。)http://www.planetary.or.jp/HotTopics/topics030219_1.htm
つまり、137億年前に、この広大な宇宙が一つのエネルギーから生じたことがはっきりしたわけだ。ビッグバンで作られたクォーツで私の体もできている。みんな「星の子」なのだ。
こんなすごいことを人類が知ることができる時代にめぐり合わせて、本当に幸運だった。
夜のニュースショーでキャスターが、3人の理論について、これは私たちの役に立つんですかと質問した。ある評論家が、これは文学みたいなもので、実生活の役には立たないかもしれないが、私たちの心を豊かにするという意味のことを言っていた。
宇宙を知ることは、この世界と私たち自身について知ること。学べば学ぶほど、驚き、感動し、感謝したくなる。