米国にそでにされた日本

北朝鮮テロ支援国家指定解除について、とんでもない事情が判明した。
ブッシュ大統領麻生首相に電話してきたのが11日夜11時すぎ。首相は浜松のホテルのラウンジで青年会議所会頭経験者らと懇談中だった。
「首相は懇談を中座、別室へ消えた。大統領の電話を受けるためだった。首相は大統領と10分ほど話したが、首相に外務省出身の秘書官は同行していなかった。関係者によると、現場には通訳もいなかったため、会談は電話回線で通訳がいる場所を経由して行われたという」(読売13日朝刊)。
名門スタンフォード大学の大学院で学んだ人が、なぜ緊急の電話で通訳が要るのかと突っ込みを入れたくなるが、それは脇において、大事なことは、首相サイドがこの電話を全く予期していなかったことだ。
このブッシュ大統領の電話による指定解除の通告は、夜11時半。「米国務省の正式発表の30分前。ライス国務長官が解除の書面に署名してから3時間後だった」。
「10日夜、中曽根外相はライス長官との電話会談後、『この週末に解除が決まることはない』と言明」していたのに、である。(読売13日朝刊)
今朝の朝日新聞朝刊がこの経過を詳しく検証している。
見出しは「日本外交そでにされた」「テロ支援解除『ない』と言ったその夜」「韓国は1日前に米から通告」。
首相がホテルで酒を飲んでいたら、外務省から「ブッシュ大統領の電話をつなげる番号はありませんか」と秘書官の携帯に電話があり、秘書官は自分の携帯番号を告げた。
「首脳の電話会談は、官邸など保秘装置のついた場所で担当の外務省幹部や専門の通訳がついて行うのが通例だが、この時は携帯電話にスピーカーをつなぎ、同席の政府関係者がメモを取りながら通訳したという。同席者は『思ってもみなかったのでバタバタだった。たまたま英語使いが2人いたから問題なかった』。大統領との電話を終えた首相は再びラウンジの酒席に戻った」。
まさに「寝耳に水」。へえ、日米間の重大事項もこんなどたばたでやっているんだ、と面白がっている場合ではない。日本外交の情報力、危機管理の程度はこれほどお寒いということなのだ。
韓国では10日夜に解除通告を受け、米国の発表を待って韓国の立場を発表する準備まで進めていたという。日本は完全に「蚊帳の外」に置かれたのだ。
ブッシュ政権は、なりふりかまわず、在任期間内に、北朝鮮核問題で進展しているという「かっこう」をつけたいだけ。米国にとっては、日本は邪魔な存在になっていたのではないか。「11月4日の大統領選までに6者協議を再び軌道に乗せたい米政府内の勢力が、情報を遮断して日本の反発を封じようとした可能性もある」と朝日は書くが、あたっていると思う。
ここにきてもアメリカを「理解」するという政治家を見ると、小林よしのり氏の描く、アメリカにしっぽを振る人を戯画化した「ポチ」という犬を思い浮かべてしまう。