病院に居られない!

takase222008-06-22

きょうサンプロで、特集「病院に居られない―後期高齢者医療もう一つの大問題」を放送した。
4月から始まった後期高齢者医療制度については、この日記でもちょっと触れたが、日本が非常に危ないところに向かっている動きを象徴するものだ。(http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080423/ http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080603
日本では就職、教育などさまざまな問題が出ているが、今や「食」、さらに「医」という暮らしの根幹に危機がおよんできた。私は、今の袋小路から抜け出すには、アメリカ型追随をやめて北欧型に舵を切るしかないと思っている。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20071208
今回の医療の問題は、ちょっととっつきにくいかもしれないが、とても大事だし、怖い話でもあるので、ぜひ読んでいただきたい。
制度施行後、まずニュースになったのは、高齢者の保険料が増える話や年金天引きなど制度開始時の手続き上の混乱だった。国民の怒りもそこに集中した。福田政権下、初の国政選挙となった衆院山口2区の補欠選挙で、自民が敗北、「これでは選挙を戦えない」と見直しがはじまった。
12日、2回目の年金天引きの直前、政府・与党は、制度の「見直し策」を決めた。中身は保険料の負担軽減の拡大と年金からの天引きの見直しなのだが、例えば、年金収入が年168万円以下の人は10月から半年間、保険料徴収を凍結するという。半年間だけはとりあえず痛くないですよ、というのだ。朝三暮四そのもの、苦い薬を糖衣でくるむ彌縫策に過ぎない。国民はバカだから、この程度でごまかせると思っているのだ。
こうした個人負担の問題はもちろん大事なのだが、それと同時に、医療・介護制度そのもの、医療・介護の中身に重大な事態が進行していることについては、あまり触れられてこなかった。きょうの特集は、その問題を取り上げている。
今回の後期高齢者医療制度の導入に関しては、患者だけでなく、医者が強く拒否しているのが特徴だ。かつては自民党の強力な支持団体だった医師会が、次々と叛旗を翻し、制度実施一ヶ月の時点で27都府県の医師会が反対の意向だ。http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-05-06/2008050601_01_0.html
特に茨城県医師会は激しく、ホームページで「後期高齢者医療制度は、高齢者に大きな負担をもたらし、医療を制限する萎縮医療そのものであり断固反対する」と、どこかの革新政党かと思うような檄文を載せ、ポスター(写真)を配り、署名活動を展開している。http://www.ibaraki.med.or.jp/?act=Topics&mode=Details&topics_no=134
医者が「やっていられない」と悲鳴を上げるほどの事態なのである。
実は、後期高齢者医療制度は、政府が進める医療破壊(とあえて呼ぶが)の一つにすぎない。いくつもの制度変更が同時並行で進んでおり、これらが一体となって医療破壊を推し進めているのだ。だから、いま話題の後期高齢者医療制度ばかりに注目していると、他の重大な問題が見過ごされてしまう。
2年前の06年、ものすごい目標を厚労省が掲げた。2012年までに療養病床を38万床から15万床にする、つまり6割も削減するというのだ。療養病床とは「病院または診療所の病床のうち、主として長期にわたり療養を必要とする患者を収容するための一群の病床で、人的・物的に長期療養患者にふさわしい療養環境を有する病床群」で、慢性期の病人が長期入院するところだ。もちろん、多いのは寝たきりの高齢者だ。
そして同年6月、その削減策は、後期高齢者医療制度とともに、医療制度改革法として可決されていたのだ。http://www.remus.dti.ne.jp/~laputa/kenpo/h18_iryou_kaikaku/h18_iryou_kaikaku.html
こんな大変なことが国会で決まっていたのに、大騒ぎしなかったメディアは責任重大だ。きちんと批判していたのは共産党くらいだった。私も恥ずかしいことにほとんど関心を持たなかった。
それでは、入院している寝たきりの患者は、38万マイナス15万で23万人もベッドを追い出されるではないか。大丈夫です、「老人保健施設」や「有料老人ホーム」が受け皿になりますと厚労省は言う。それは本当なのか?
(つづく)