安明進事件は「謀略」だった!

昨夜、安明進とソウル市内で会った。
ほぼ1年半ぶりだった。逮捕事件後は電話で話しただけで、会うのはもちろん初めてだ。
彼は、覚醒剤事件で一緒に捕まった恋人を連れて現れた。本当のことを説明したいという。手にファイルを持っている。近くの食堂に入ってそのファイルを見せてもらった。そのなかにある資料は衝撃的なものだった。
結論的には、安明進覚醒剤常習と密売で逮捕されたのは、《政治的工作》の可能性が高い。これまでの私の認識を修正せざるをえなくなった。
過去、安明進とは、ときどき連絡が取れなくなった。そんなときは、また中朝国境に行っているな、と思っていた。かなり危険なことをやっているようだった。日本に逃げてきた脱北者のために北朝鮮に残っている家族と連絡を取ったりしたこともある。
安明進は複数回、中国当局に拘束されたことがある。その後で、「もう絶対に中国に行っちゃだめだよ」と私が言うと、彼は笑って「もう行きません」と答えるのだが、やめなかった。
私は、安明進は、中朝国境への潜入を彼個人の判断でやっているのだと思っていた。日本のマスコミの中朝国境取材を斡旋したりもしていたからだ。
ところが、今回、彼が見せてくれた資料によると、国家的な任務、しかもかなり謀略性の高い極秘任務を負っていたのである。彼との約束で、私はいま公表できないが、表に出たら政治スキャンダルになりかねない任務である。
安明進はその任務の過程で覚醒剤を入手した。それを彼が個人的に所持していたことを、一部の公的機関は把握していた。
ある日、知り合いの男性から安明進に電話があった。7年間も音沙汰のなかった人からの突然の連絡だった。それから毎日のよう電話があった。男の用件とは、覚醒剤を分けてくれということだった。なぜ、安明進覚醒剤を持っていることを男が知っているのかいぶかりながらも少量分けてやった。金はいらないというのに、銀行口座に振り込まれていて、それが売買の証拠にされたという。これが安明進の説明だった。
詳しくはいえないが、安明進をよく知るある公的機関が、男をおとりに使って安明進を「はめた」ことは、ほぼ間違いないだろう。裁判でほとんど抗弁しなかったのはなぜかと聞くと、「大事な任務に関することは絶対に言えませんから」と言う。
事実は小説よりも奇なりというが、まさにそれを地でいく話である。
いつか、彼の口から、真相が明らかにされる日は来るのだろうか。