韓国のサクラ

きのうから韓国に来ている。
《ずいぶん桜が多いなあ》と思った。韓国には何度も来ているが、桜の季節に当たっていなかったせいか、こんなふうに感じたのは初めてだ。
金浦空港からソウル中心部に向かう途中、道路わきの並木にも、山の麓の公園にも桜が目立つ。「サクラ!」と私が指差して叫ぶと、タクシーの運転手は、桜は韓国語で「ポッコッ」と言うと教えてくれた。
圧巻は、ソウルを流れる漢江(ハンガン)の中州、汝矣島(ヨイド)だ。ここにはKBS(韓国放送公社)やMBS文化放送)などのマスコミが集中しているので、私にはなじみの場所だが、この時期は国会の緑色の建物を桜並木が取り巻いていてとても美しく見えた。
韓国観光公社のサイトには、各地の桜の開花予想や桜の名所が紹介されている。
《韓国の桜の名所と言えば誰もが挙げるのが慶尚南道の鎮海(ジネ)。毎年3月末頃に開かれる「軍港桜芸術祭」 は韓国一の桜祭りと言われており、海軍のある町という地域的特性を活かし海と軍艦、桜が調和した鎮海ならではの光景が見られる祭りとなっています》http://japanese.tour2korea.com/03Sightseeing/TravelSpot/travelspot_read.asp?oid=2156&konum=1&kosm=m3_7
桜には「日本」のイメージがあり、韓国ではあまり人気がないのかと思っていたので、ちょっと意外だった。
ただ、老木をほとんど見ないところから、私は韓国の桜人気は近年のことなのではないかと思う。きょう、製鉄所で知られる日本海側のまち、浦項(ポハン)に行ったら、そこでも桜が目に付いた。ほとんどがここ数年で植えられた若木だ。桜ブームと言ってもいいかもしれない。何か背景があるのかこんど韓国人に聞いてみよう。
ところで、ネットで韓国と桜の関係について検索したら、案の定、「たかが花」という問題ではなさそうだ。韓国の新聞では、桜の起源は日本ではなく韓国であるとの主張がなされているという。韓国では、花を楽しむにも、いったんはこうした正当化をくぐらないといけないのだろう。
ソウルの町を見回すと、春の花で目立つのは、「ケナリ」(れんぎょう)、「チンダルレ」(つつじ)、「モンニョン」(木蓮)などがある。花ではないが「ポドナム」(柳)が実にいい。春の柔らかい緑が目に心地よい。
だが、やはり「ポッコッ」(桜)には強い存在感がある。桜は一斉に咲いて町の風景を変え、あれよあれよと言う間に散ってしまう。この独特の魅力は「ブーム」を起こしても不思議ではない。短い盛りを花の下で楽しもうと、韓国人も酒盛りをするそうだ。
夕方、浦項からソウルに帰ってきたら、汝矣島(ヨイド)の桜並木はたくさんの家族連れでにぎわっていた。桜はほぼ満開で、今週が見ごろとなる。
「ワシントンのポトマック川にサクラの花が咲きました」というのが、春の国際ニュースの定番だったが、近いうち、「ソウル、ヨイドで恒例のサクラ祭りがひらかれました」というニュースに取って代わられるかもしれない。