おととい4月2日、TBSが報道大河スペシャル《いのちの地球―いまそこにある50の危機》を放送した。
ジン・ネットはこの中で「エネルギー政策の矛盾・アマゾンの奥地で知った真実」部分を担当した。
アメリカのブッシュ政権がバイオエタノール促進策を進めている。原料のトウモロコシを栽培すると補助金が出て儲かるから、大豆からの転作が急激に進んだ。そこで大豆栽培がアマゾン流域に進出し、森林を伐採しては広大な大豆畑が作られている。環境に良い、と言われているバイオエタノール政策が、アマゾン奥地の先住民シャバンテ族の生活環境に大きなひずみをもたらしているという矛盾を取材したものだ。ついでに付け加えると、ブラジルでは大豆が主要なバイオ燃料の原料にもなっている。
写真は、ブラジルのマトグロッソ州にあるアマゾン熱帯雨林の、2001年と2006年の開発状況。
去年は、バイオエタノール礼賛が、新聞やテレビにあふれた。日本もバスに乗り遅れるな!という論調も多く見られた。勉強していなかったので、声高に反対意見を述べたりしなかったが、トウモロコシや大豆を車の燃料にするなんて変な話だな、いいわけないのに、と内心思っていた。
そしたら、案の定、「バイオ燃料は反エコ」という研究が出てきた。
《トウモロコシなどの穀物からバイオ燃料をつくるために森林や草地を切り開いて畑にすると、温室効果ガスの排出量が数十年から数百年にわたって増えて地球温暖化を促進するとの研究結果を、米国の2つの研究チームが8日までに米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。
二酸化炭素(CO2)の排出削減につながるとして、世界中で温暖化対策の有力な柱に据えられるバイオ燃料だが、米ワシントン・ポスト紙によると、10人の科学者グループがこれらの研究結果をもとに、ブッシュ大統領や議会幹部に政策の見直しを求める書簡を提出した。
両チームとも、土地の新規開拓で焼き払われる樹木や、耕される土壌から長期間にわたって放出されるCO2を勘案したバイオ燃料と、同量の化石燃料とで、排出されるCO2量を比較した。
プリンストン大のチームによると、トウモロコシを原料にしたエタノールの場合、30年間はバイオ燃料の方がガソリンより2倍近くのCO2を放出。ガソリンの排出量を上回るのは167年間も続くことが分かった。土地を新規開拓せずに生産したエタノールを使えば20%の削減になった。
また、ミネソタ大などのチームによると、インドネシアの泥炭地の森林をディーゼル燃料向けのアブラヤシ畑にすると423年間、ブラジルの熱帯雨林をディーゼル燃料用の大豆畑にすると319年間、それぞれバイオ燃料の方が化石燃料よりも排出量が多いとの結果が出た。(共同2月9日)》
バイオ燃料と言っても原料や製造法で結果が違ってくるという。中でもトウモロコシが最悪という研究結果もある。http://news.goo.ne.jp/article/wiredvision/life/2008news1-15396.html
いま食糧が恐ろしい勢いで値上がりしている。
06年1月に1ブッシェル(27㌔)3.44㌦だった小麦が、今年2月には10.9㌦と3倍超になっている。日本は価格を安定させるため、いったん政府が輸入小麦を買い取ってから製粉会社に卸すから、30%の売り渡し価格の値上げで当面はすんでいるが、半年後再び値上げになるのは必死だ。こんな狂乱物価を招いた重要な原因の一つが、ブッシュ政権のバイオエタノール促進策にあるのは明らかだ。小麦からトウモロコシへの転作で、小麦が高騰したのだ。結局、トウモロコシも大豆も小麦もどんどん値上がりしていくわけである。
コメがまたすごいことになっている。03年まで1㌧200㌦だったタイ産うるち精米(2等)の輸出価格が、今年3月末で630㌦と3倍超になった。世界的な食糧の不足、高騰のなかで、穀物を車の燃料にするなんて・・・。
いま進行している事態は、背筋が寒くなるような怖さを秘めている。もっと勉強しなくては!