日本政府は、積極的に国際刑事裁判所(ICC)の活動に取り組むことを明らかにしている。以下は、齋賀富美子氏を裁判官候補者に指名した7月6日のプレスリリースである。
《7日6日の閣議において、麻生太郎外務大臣より、本年12月に行われるICC裁判官補欠選挙の候補者として、我が国の人権・ジェンダー問題の第一人者である齋賀富美子人権担当大使・国連女子差別撤廃委員会委員を指名する旨発言を行った。
ICCは、集団殺害(ジェノサイド)犯罪や人道に対する犯罪等の「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」を犯した個人を国際法に基づき訴追・処罰するために2002年に発足した史上初の常設国際刑事法廷であり、我が国は、本年10月にICCの正式な締約国となる予定である。我が国は、裁判官をはじめとする日本人職員をなるべく多く輩出し、人的貢献も通じてICCの活動を積極的に支持していく考えである。
我が国のICC加盟直後に我が国出身者がICC裁判官に選出されれば、国際刑事法・人道法の発展に対する我が国の主体的な取組を目に見える形で強力にアピールでき、我が国が掲げる「価値の外交」の一環である国際社会における「法の支配」の推進に寄与するものと考えている。》(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h19/7/1174415_808.html)
そして齋賀大使は先日、ICC判事に選出された。
13日の拉致問題の国際シンポジウムに、その齋賀大使が参加されていたので、いい機会だと思い、パネリストとして招かれた私は、持ち時間の半分以上を使って「すぐに拉致問題を提訴しましょう」と主張した。
これに対する齋賀大使のコメントは非常に興味深いものだった。
齋賀氏は、私が挙げた、拉致実行地が日本であり、現在進行形の犯罪なのだから十分に条件を満たしているという指摘には全く反論しなかった。齋賀氏が問題としたのは、拉致の「重大性」だった。ICCが裁判を始めるには、それが「重大な犯罪」と看做されなくてはならない。そして、その「重大性」は、これまでの事例を調べると「規模」が大きい、「人数」が多いという傾向があるという。その辺を検討しているというのだ。
日本政府の高官が、拉致問題のICC提訴について、こうした発言をしたのは、注目に値する。ある程度、具体的な検討を始めていることを示している。
ICCは何でもかんでも扱うのではない。「管轄権は、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪に限定する」という条項がある。拉致が、「最も重大な犯罪」と看做されることが必要なのだ。
どうやら、提訴の入り口にあたる、ここを突破することが当面の課題のようだ。
シンポジウムが終わってから、ロビーで、齋賀富美子大使とどうすればよいかと議論になった。
(続く)