金正日を国際法廷へ!

拉致指令者、金正日国際法廷で裁く。まるで空想と思われるかもしれないが、いま実現可能性がでてきた。
その法廷とは、国際刑事裁判所(ICC)で、2002年にできた「国際社会な影響を及ぼす大量虐殺、戦争犯罪や人道に対する罪を犯した個人を裁く常設裁判所」だ。
個人の責任を裁く常設の裁判所としては歴史上初めてだという。
「旧ユーゴ国際戦犯法廷」や「ルワンダ国際戦犯法廷」が一定の期間だけ対象国や地域を限定して開かれる臨時の国際法廷だったのに対して、期間や地域に限定されずに重大な戦争犯罪や人道に対する罪に対して幅広く法の網をかぶせることができる。「ナチス・ドイツによるホロコーストや、ポルポト政権の大虐殺などのような犯罪が、今後発生してもICCがあれば、常時そこで裁くことができる」ようになる。(以上国際刑事裁判所問題日本ネットワークのホームページhttp://homepage3.nifty.com/wfmj/icc/index.htmより)
日本は締約国になるのが遅れ、この10月1日(法の日)に 国際刑事裁判所(ICC)設立条約「ローマ規程」に正式加入し、ついに105番目の締約国となった。
ここで裁くことができる犯罪の中に、「強制失踪」(第7条i)がある。定義は以下。
「《人の強制失綜》とは、国若しくは政治的組織又はこれらによる許可、支援若しくは黙認を得た者が、長期間法律の保護の下から排除する意図をもって、人を逮捕し、拘禁し、又は泣致する行為であって、その自由をはく奪していることを認めず、又はその消息若しくは所在に関する情報の提供を拒否することを伴うものをいう」。
英文は"Enforced disappearance of persons" means the arrest, detention or abduction of persons by, or with the authorization, support or acquiescence of, a State or a political organization, followed by a refusal to acknowledge that deprivation of freedom or to give information on the fate or whereabouts of those persons, with the intention of removing them from the protection of the law for a prolonged period of time.
(参照:外務省の「国際刑事裁判所に関するローマ規程」和訳正文http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty166_1.pdf
(民間による和訳のほうが部分的には分かりやすいhttp://homepage3.nifty.com/wfmj/icc/index.htm
ギャング団による誘拐などではなく、国家による行為を問題にしている。北朝鮮による日本人拉致がこれに当てはまることは間違いない。
これを国家や組織ではなく、個人の責任として裁くというのである。
すごいのは、個人の地位に関わりなく裁かれうることで、国家元首まで含まれる。旧ユーゴ国際戦犯法廷ではユーゴ大統領だったミロシュビッチが裁かれたが、ICC(国際刑事裁判所)はその流れを引き継ぐものだ。時効がなく、最高刑は「終身拘禁」。
(旧ユーゴでの戦争において、セルビアを一方的に悪者にした国際社会の姿勢には大きな問題があるが、それは別の機会に書く)
では、具体的に北朝鮮による拉致は裁けるのか。金正日を容疑者としてシミュレーションしよう。
ICCが管轄権を行使できる前提に「被疑者国籍国が締約国である場合」というのがある。北朝鮮は締約国になっていないから、これでは被疑者である金正日は裁けなくなってしまう。
しかし、管轄権行使のもう一つの前提には「犯罪行為地国が締約国である場合」というのも挙げられているのだ。締約国で拉致が行なわれた場合は、被疑者、金正日の国籍にかかわらず訴追できると解釈できる。
ほとんどの拉致は日本の海岸で行なわれている。また仮に、有本恵子さんの拉致現場をデンマーク松木さん、石岡さんの拉致現場をスペインとした場合、これら三国はみな締約国であって、十分に条件を満たしている。
もう一つの問題は、時間的管轄だ。
訴追しうるのは、ICCローマ規程が発効した02年7月1日以降に行われた犯罪に限られるのである。いま問題にしている拉致は、みな20年以上前の事件だ。やはり拉致は扱えないのだろうか。
いや、そんなことはない。(続く)