北朝鮮のテロ国家指定解除は秒読み

きのう1日、北朝鮮の核施設の無能力化作業チームが北朝鮮に入った。具体的にどんな無能力化をするのか注意して見ていよう。
一方アメリカは、北朝鮮の「テロ支援国家」指定解除をいよいよ年内にやるつもりのようだ。
まず「解除」する手続きはこうだ。「大統領が下院議長と、上院の銀行・住宅・都市問題委員会委員長と外交委員会委員長に取り消す旨の報告書を提出し、それを受けて国務長官が取り消します。報告書の提出後、45日で発効します」(アメリカ領事館=福岡のホームページ)。
年内にテロ支援国家指定解除を「発効」させるには、11月半ばまでに議会に報告書を出さないといけない。それはいくらなんでも無理だ、どうするんだろうかと思っていたら、きのうの朝日新聞朝刊にこんな記事が載った。
ヒル米国務次官補は31日、北朝鮮テロ支援国家指定解除について、解除の45日前に義務づけられている米議会への通知をもって「事実上の解除」とする考えを示した。北朝鮮は「年内解除」を主張しており、年内に解除を確定させるには11月半ばまでに議会へ通知しなければならないが、議会への通知をもって「解除」と位置づければ、米国は45日間の「猶予期間」を稼げることになる。
 ヒル氏は「(議会への通知は)解除をはっきりさせる動きで、かぎとなる瞬間だ。大きなステップになる」と述べた。》
要するに、年内の発効は無理だが、議会への通知は年内に間に合わせるから、それで「年内解除」と見なすことにしようということで、北朝鮮と手打ちをした。そうとしか読めない。
ここ数ヶ月、アメリカが指定解除にどんどん傾いているのは明らかだった。だが、解除に踏み切るにはまだ時間がかかるだろうし、その間に北朝鮮の化けの皮がはがれ、米国内での反対意見も出てきて、解除方針が撤回されるといった展開もあるのでは、とついこないだまでは思っていた。しかし、このところの動きを見ると、アメリカ政府は、もう年内解除の方針で固まったようだ。ブッシュ大統領は、対北朝鮮外交を、ヒル国務次官補に丸投げしており、ヒルは「解除」に前のめりなのだ。
9月3日、北朝鮮外務省報道官が、ジュネーブで前日まで行われた六カ国協議の「米朝国交正常化」作業部会で「米国はテロ支援国リストからわが国を削除し、敵国貿易法による制裁を全面解除する政治経済的保障措置を取ることにした」との談話を発表したというニュースを朝鮮中央通信が流し大騒ぎになった。直後にアメリカ側が否定したのだが、今から思えば、あの談話は正しかったのだろう。
ヒル国務次官補は作業部会終了後、指定解除問題について「具体的な内容は明らかにできない」という言い方をしている。「外部には黙っていようね」という約束だったのを、北朝鮮側が一方的に発表したということなのだろう。ヒルはもう、日本には黙って北朝鮮とコトを進めている。
ヒルの元同僚で、アメリ国務省で長く北朝鮮との交渉を担当してきた人が東京に来ていて、きょう午前会った。彼は、強硬派ではなく「関与派」なのだが、ギブアンドテイクになっていない今の交渉のやり方を激しく批判した。北朝鮮の非核化プロセスが具体的に進展していないのに、一方的にテロ支援国家指定解除の「約束」までしている。6カ国の枠組みでと言いながら、日本を含め他国にいっさい相談せずに、ヒルは金桂冠(キムゲグァン)と密室でどんどん決めていっていると憤慨していた。いまや、「関与派」から批判が出るほど、異様な外交をヒルは行っている。
シーファー駐日アメリカ大使も、指定解除について「太平洋で最も緊密な同盟国である日本との関係に悪影響を与えかねない」とした電報をブッシュに直接出したという。(ワシントン・ポスト26日)
アメリカの年内解除方針をひっくり返すのはかなり難しそうだが、日本は最後の勝負をかける。今月16日の日米首脳会談、そして10日からは拉致議連・家族会・救う会の訪米がある。こうした日本からの働きかけに、アメリカ国内からの反発がどれだけ呼応するか。
そして、12月半ばの韓国大統領選挙の結果がどうなるか。
これから2〜3ヶ月中に、東アジア情勢に大きな転機がやってくるのは間違いない。