私がここにいるわけ その2②

 お知らせです。ウクライナ取材のZOOM報告会をやります。関心のある方はどうぞ。無料です。

★AFS友の会「ZOOMネットワーキング3月の集い」へのお誘い★
ウクライナの戦争が私たちに問いかけるもの~日本人は危機の時代をどう生きるのか」
■ 講師: 高世 仁さん
■ 日時: 2024年3月14日(木) 20:00~21:30
■ 会場: ZOOM オンライン
*参加申し込みされた方にはミーティングIDをお送りします。
■ 参加費: 無料
■ お申し込みは下記ウェブページよりお願いいたします。
    申し込む (https://bit.ly/3uMrKOv
    「tomo@afs.or.jp(共有なし)アカウントを切り替える*必須」 という表示が出てきますが、この表示は無視して下のお申し込み画面に進んでください。
■ 申込締め切り: 2024年3月13日(水)
■ 主催: AFS友の会

 

 ウクライナでは、戦争遂行のために民間の寄付を募る動きがさかんになっている。

 私は昨年10月に現地を取材して、ウクライナが世界第二の軍事大国に屈しないで戦えるのは国民の士気以外には、国際支援とボランティアによる支援だと思った。欧米からの支援が激減するいま、もう一つの柱により多く頼らざるを得ないのだろう。

 弱体なウクライナの航空戦力を補ってきたのがドローン(無人飛行機)だ。ロシアによる軍事侵攻直後、首都キーウの近郊まで攻め込んできたロシア軍を撃退し押し返すことができたのは、ドローンの貢献が大きかったといわれる。昨年の取材で、前線部隊がドローンをNGOから贈られたという例を知ったが、SNSでさらなる寄付を呼びかける兵士も出てきたという。

SNSでドローンの装備品などを購入するための寄付を前線の兵士みずからが呼びかける動きが拡がっているという。ドローン戦には、飛行の長距離化、映像の画質の向上、妨害電波への対処など不断の改良が求められる。(NHK国際報道より)

 ただ先日ZOOMで交流したマックスというボランティアは、戦争が長引き、ウクライナ経済の厳しさが続くなか、カンパを集めるのはより困難になっているという。交流会に参加してくれた人たちから寄せられたカンパを3日前にウクライナに送金したが、大変喜ばれた。「いまのウクライナには、額の大小にかかわらず、どんな寄付でも貴重です」と返信がきた。支援を続けたい。
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 自転車で近くの川沿いの道を通りかかったら、早咲きの桜が満開だった。寒い日が続くが、確実に春が近づいてきている。

東村山浄水場近くの空堀川沿い。たぶん河津桜(筆者撮影)

 「私がここにいるわけ~高校生に語るコスモロジーのつづき。

《人生の目的は「自分が幸せになる」ためか》

 きょうはいい機会だから、ぼくが何のために138億年前のビッグバンで宇宙がはじまってからの話を延々と宙くんに語っているのか、そもそもの話をしようか。

 はじめに宙くんに質問。「この世でいちばん大事なもの」は何だと思う?
 そうか、宙くんは「自分がいちばん大事」なのか。それ以外の答えなんて考えられない、みんな、そう思ってるはずだって? そうかな。

 じゃあ次の質問。「人生の目的は、自分が幸せになることにある」。これはどう?

 その通りだと思うんだね。「楽しくなければ人生じゃない」という考え方は? これも賛成、なるほど。宙くんの友だちもそう思ってるんだね。

 宙くんはそういう考え方は、ごくあたりまえで、世界中みんな同じだと思ってない? 実はさっきの人助けの調査のように、あたりまえじゃなくて、日本は特別なんだ。そしてね、同じ日本でも昔はそうじゃなかった。たとえば、ぼくくらいの世代だと、子ども時代に「この世でいちばんn大事なのは自分だ」と言う人は、あまりいなかったと思う。それ言ったら、ちょっと恥ずかしい感じがしたはず。これが戦前、第二次世界大戦前の日本、例えば明治時代なら、いちばん大事なのは「家(いえ)」とか「国」とか「村」という答えになっただろうね。もっと前だと、家の名誉を守るために切腹したり、なんていうのを時代劇で見たことあるでしょ。“自分”より大事にするものがあったんだ。

 そんなのかわいそう、今の時代に生まれてよかった、と思うかもしれないけど、ぼくが言いたいのは、価値観の根本のところが時代によっても違ってるってことなんだ。いまの宙くんの価値観、人生観は、世界であたりまえでもなければ、日本人が時代を超えて持ち続けてきたものでもない。こういうのを"相対化“するっていうんだけど、頭を柔軟にして、別の価値観、人生観があるということを想像してみてほしい。 

 そしてね、大事なのは、今の日本でほとんどの人が持ってる「私がいちばん」という考え方だと、心が元気にならない。宙くんたち十代の若者の死因を調べると、自殺が1位なのは主要国では日本だけ(注1)。日本の若者が、自己肯定感、つまり自分は今の自分でいいんだと自分に自信を持つ感覚がとても弱いのは、国際調査でもはっきり出ているんだ。子どもだけでなく、大人もそうで、日本人は総自信喪失状態で総“うつ”状態。ちょっと言い過ぎかな(笑)。さっきの国際調査でわかるように、人に対する"やさしさ“も持てなくなってる

 ぼくは外国出張から日本に帰ると、笑顔が少ないなと感じる。カンボジアに住むぼくの友人が、東京のデパートでカンボジアシルクの手織りを実演することになった。そこで、カンボジアの田舎に住む、織りの名手のおばあちゃんを日本に呼んできた。山手線で移動中に、おばあちゃんが友人に不思議そうに尋ねた。「なんで、みんな怒ってるの?」って。電車の中は、むっつり押し黙っている人々ばかりで、おばあちゃんにはみんな怒ってるように見えたんだって。そのくらい、日本から笑顔が消えてる。

(つづく)