坂本龍一の「ダウンタウン理論」によせて

 松本人志の“性加害疑惑”について、きょう発売の週刊文春』は【《新証拠入手》6、7人目の告発者が…松本人志「ホテル室内写真」と「女性セレクト指示書」】の特集を載せた。被害を訴える女性が次々に現れ、これで7人になったか。

「ミヤネ屋」18日OAより

 「裁判で事実関係がはっきりするまでは何も言えない」などと遠慮がちにコメントする芸人や識者がいるが、そんなこと言ってたら、自民党の裏金問題も批判できない。

 これだけ多くの女性が悩んだ末に意を決して証言し、しかも日時や場所、事実関係のディテールを語っている。悪質な犯罪でもある。告発された本人は、影響力も、ある種の「権力」もある超有名人、当然公の場で釈明または謝罪するのが筋だろう。裁判はまた別の話。

これに続いて「休業宣言なんかしなくていい」と。「上沼恵美子が一刀両断」って触れ込みでこれじゃあ、擁護してるだけ(ミヤネ屋より)

 「ジャニーズ」の問題では“もみ消し”に加担したとされるマスコミは、今回は忖度なしに報じることが求められる。

takase.hatenablog.jp

 私はダウンタウンは以前から嫌いだったが、私的な好き嫌いとは関係なく、社会問題として正面から扱うべきだと思う。

 『Friday』に博多華丸大吉の大吉と松本人志とのエピソードについての記事が出ていた。これは信憑性がありそうだ。

《(前略)松本のために女性を集めなければならない。このプレッシャーは後輩にとって凄まじいものだったようだ。

 ‘15年2月に福岡で行われた公開収録イベント『人志松本のすべらない話プレミアムライブin 福岡』ではお笑いコンビ『博多華丸大吉』の大吉が、松本が初めて福岡に来た際の話をしていた。

 松本は今田耕司らほか5人で福岡に来るということで、大吉は“わかってるな 女の子を用意するように”と命じられたと話す。

 大吉は福岡に詳しいため、他の先輩らが来ても店や飲み会をセッティングしていたそうだが、有名な松本なら“余裕で集まるだろう”と高を括っていたという。しかし声をかけていくと、松本軍団が全国での悪評が福岡の女性らに広まっており

「飲み会に行ったら何をされるか分からない」

「“笑いよりも後に与えられる暴力の方が上回る」

などと言われたようで、全く女性が集まらなかったというのだ

 困った大吉は福岡吉本の芸人らに協力を求め電話をかけまくったが、みんなが“嫌だ”といい、松本がやってくる2日前になっても女性は1人しか集まらなかったと暴露した。その話を初めて聞いた松本も驚きを隠せない様子だ。

 というのも直前になって“松本さんと次会えるのがいつになるか分からないのでやっぱり行きたい”という連絡が相次いだため、蓋を開ければ結局50人の女性が来ることになったというのだ。

 芸人5人に対し、女性50人ということで2部制の飲み会にしたようだが、松本はテレビでも見せないほどの笑顔で女性らとコミュニケーションを取っていたと大吉は明かす。割烹料理の店を貸し切ったようだが、お会計になり、大吉が

「33万6000円」

という伝票を松本に見せると一瞬で笑顔が消えて青ざめ、か細い声で

「今田呼んできて……」
と言った、というエピソードを披露。会場はそのオチで爆笑となった。

 松本も振り返り「ダッサ!」と自虐を言ったが、

「そのあと今田と(会計を)割った気がする」
と自白。女性関係だけでなく、松本の“ケチっぷり”も如実に表したエピソードだった。》
https://news.yahoo.co.jp/articles/eaea058e6663a9d4db0fc9454e1090ff9988484d

 松本の権力者ぶりがよく分かる。

 

 「性被害」とは直接関係ないが、坂本龍一に「ダウンタウン理論」というのがある。

 これは私が本ブログで指摘しているコスモロジーの崩壊にもぴったり当てはまるので、ちょっと長いが、2回に分けて紹介する。作家の天童荒太との対談(2000年)より。

坂本:昔からあった日本なりの秩序が、ここ2,3年で大きく崩れちゃた。

天童:それは、そこここで微妙に感じます。

坂本:なんでだろう。

天童:なんででしょうね。

坂本:僕は、ダウンタウンのせいだと思う。

天童:面白くなってきた(笑)。

坂本:僕にはダウンタウン理論というのがあるんですよ。

天童:そのココロは?(笑)

坂本:ダウンタウン前とダウンタウン後で日本人の心は大きく変わった。

 つまりね、ダウンタウンの原型は、僕らの世代にあるわけ。権威を信じない、笑いたい、失墜させたいというのは、1960年代的でしょう? でもそれは、社会に権威があってこそ成り立つ方法で、60年代はそうだった。でも、いまは反抗すべき権威はなくなっている。それなのに、なんとか権威を失墜させようとするあまり、倫理的な規範とか社会的なルールを壊そうとしてしまってるんだよね。

 あれもこれも壊して当たり前、壊すのが普通なんだというところまで進んでしまうと、社会は崩れるしかない。いままで、面白おかしいかたちで、いちばん体現したのがダウンタウンだったと思う。その前のお笑いを引っ張ってたのはビートたけしだけど、たけしの笑いの基本はやっぱり、挑発すべき権威というのがある時代のものだから、ダウンタウンとの間には大きな断絶があるよね。

天童:(略)

坂本:挑発すべきものがなにもないところでやってるから、パフォーマンスとしての反抗にならざるを得ない。ここ2,3年のダウンタウンの芸って、年下の芸人をいたぶってるだけで、一言で言うと、「どんくさいやつをいじめてなにが悪いの」ってことでしょ。
(つづく)