ジャニーズ性加害とマスコミの責任

 猛暑はまだ続いているが、季節は確実に動いていて、夕方には秋の虫がさかんに鳴いている。

 9月になったということは、今年の3分の2が過ぎたわけだ。時間の区切りを意識するたびに、しっかり生きようと思う。

暑いなか畑で人参の間引き。葉っぱはレンジでチリチリにしてふりかけを作った。

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 ジャニーズ性加害問題で再発防止特別チームが8月29日に記者会見したが、ここで「マスメディアの沈黙」についても指摘している。マスコミが報じなかったことで、ジャニーズ事務所の隠蔽体質を強化し、結果として多くの被害者を生む原因になったというのだ。

国連専門家が被害者に聞き取り調査を行い、8月4日、記者会見。「日本のメディアは数十年にわたり、この不祥事のもみ消しに加担した・・」(日テレのニュースより)

 「沈黙」の理由としては、一つには芸能番組などでビジネスとして結びついているための忖度。また、報道記者たちには単なる「芸能界のスキャンダルに過ぎない」とする偏見や少年の性加害への無理解もあったろう。

 BBCの番組で問題が大きくなってからでさえ、日本での報道は不十分と言わざるを得ない。かつて日テレにいた水島宏明上智大学文学部新聞学科教授によればテレ朝がとくにこの問題をスル―しているという。
https://biz-journal.jp/2023/09/post_358912.html

 マスコミとジャニーズ事務所の関係を「人権デューデリジェンスの観点から問題にする田玉(ただま)恵美朝日新聞論説委員の指摘にはなるほどと思った。(朝日新聞7月8日朝刊)

 「人権デューデリジェンス」(聞きなれないカタカナ言葉ですみません)とは、人権侵害が疑われる企業に対し、取引先の企業が「介入」していく手続きをいい、近年の企業経営で重要課題になっている。例えばチョコレート会社が原料のカカオの生産現場で児童労働が行われていたら是正を働きかけるのが当然とされる。「人権デューデリジェンス」については、国連が指導原則を定め、日本政府も昨年ガイドラインを作って企業に行動を求めた。

 ビジネスと人権の関係に詳しい蔵元左近弁護士によると、ジャニーズ事務所を利用して事業を行っている以上、テレビ局もタレントの人権に責任を負っている。影響力を行使すべき局面です」という。また「経済的な結びつきが強く、社会的な影響力も大きいテレビ局や大手スポンサーにとっては、ひときわ優先度の高い案件」だと蔵元さんは見ている。

 つまり、報道機関である前に、ビジネスをする企業体としての姿勢、責任を問うているのだ。この観点に立てば、ジャニーズの性加害は、マスコミにとって単に取材対象というだけではなくなる。まさに他人事ではない。

 具体的には、十分な事実解明や被害者保護を行うようジャニーズに要求し、そのやりとりを積極的に世間に情報公開していく必要があるという。即座にジャニーズとの取引を切るのは「タレントの働く場を奪うという別の人権問題を生む恐れがあるので契約解除は最後の手段。事態改善のために地道に働きかけることが大切です。」(蔵元さん)

 外国の放送局で取り上げられただけでなく国連からもせっつかれているジャニーズの性加害問題。実は報道する仕事に携わっていた私自身、この問題を報じるべきだとは思っていなかった。エンターテインメントの世界はそういう「変なこと」もあるんだろうな、自分たちとは縁のない話だな、と見過ごしてきたことを告白しなければならない。日本のメディアは「もみ消しに加担」した責任を取り、具体的な行動に踏み出してくれるよう期待する。