ジャニー喜多川問題を報じなかったマスコミの罪2

中村哲医師を支援してきたペシャワール会のカレンダー

 うまそうなスイカが山積み。6月のペシャワール会のカレンダーだ。中村哲医師の言葉—

「平和」とは大地の上に築かれるもので、自然と人間との関係のあり方が大きな意味を持つような気がしてならない。

敵は自分たちの中にある。スイカと平和に何のつながりがあるか。乏しい想像力を巡らすのはやめて素直にその甘さに舌鼓をうち、皆を激励する。

 6月の異様な暑さ。これも「自然と人間との関係のあり方」の問題だろう。

近くの八百屋に山形の山菜がならんでいた。わらびを買う。山形は全国のわらびの8割を出荷する。

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 前回書いたように、ジャニー喜多川氏による性加害について、日本のメディアが沈黙する一方で、『ニューヨークタイムズは2000年はじめに報じていた。以下、一部を抜粋する。

《喜多川の影響力は大きく、新聞、雑誌、テレビの報道を厳しくコントロールしているとメディア評論家や記者たちは言う。

 実際、昨年の秋、日本最大の雑誌の一つ週刊文春が、彼が十代の少年たちと性的な関係をもったと糾弾する一連の報道を始めるまでは、日本の大手メディアで彼にはむかうところはどこもなかった。

 「もしもテレビ局がジョニーの事務所の意向に従わなければ、人気スターはみな番組から引き揚げられ、バラエティ番組は有名人のインタビューもできなくなって視聴率が急落するだろう。文字メディアも同じだ」と芸能リポーター梨元勝は言う。

 昨年10月後半に記事が出始めて以来、喜多川の事務所はこの雑誌に宣戦布告。「週刊文春」を虚偽の報道をしたとして名誉棄損で訴え、宣伝用写真の提供や喜多川の行為に関するインタビューの求めを拒否した。この雑誌の同系列の出版物も喜多川のグループへのアクセスを拒絶された。

 この雑誌の告発や喜多川氏の提訴を報じる日本の主要メディアはどこもない。近年、若いころ喜多川氏に性関係を強制された被害者たちが何冊かの告白本を出版したが、これらも報道されることはなかった。・・・》

 この記事に梨元勝が登場するが、彼はジャニーズ事務所に忖度するテレビ局と何度も衝突、自ら番組を降板することもあった。

公式ブログより

 2006年には、レギュラー出演していた静岡朝日テレビ『とびっきり!しずおか』で、「ジャニーズ事務所に関する話題を取り上げるな」と求められたことに激怒して自ら降板している。これについては、自らのオフィシャルブログに「降板について」(2006-06-22)として思いを書いている。

ameblo.jp

 

《先週、2年以上出演していた番組を降板しました しょぼん。

キッカケは、ジャニーズのニュースは今後一切扱わないという局の自主規制。(略)
視聴者の方を前にして、伝える側が、都合のいいニュース 都合の悪いニュースを勝手に判断するということは見てくださっている方への裏切りだと思うのです。》

 梨元氏、立派だなあ。

 

 『NYタイムズ』の記事は、藤田博司上智大教授(メディア論)へのインタビューで、日本のメディアの弱み、記者クラブの弊害にも及んでいる。

「当局が喜多川氏の捜査を始めるとなったときに限り、メディアは広く報じることになる」

「ほとんどの記者は、公的な情報源に依存しており、政府機関や広報会社から提供されるものを超えて情報を発掘することはほとんどない。多くの記者は政府省庁が設置した記者クラブに属しており、政府が言いたいことを従順に伝えている」(藤田氏)

 『NYタイムズ』は、12歳のときに喜多川氏にレイプされたと証言する70年代のジャニーズ・グループのメンバーだった人物にも取材。彼は「週刊文春」の記事をみて、喜多川氏が少年への虐待をまだ続けていることに怒りを感じて告白しようと思ったという。

「嫌だったけど、もしも拒否したら、僕はここから追いだされてしまい、他に行くあてがありません」と語る彼のケースは、今回国会で可決された刑法改正の「不同意性交」そのものだ。そもそも、レイプされたのが12歳の時で「16歳未満」である。

 国会でもジャニー喜多川氏の性加害が取り上げられ、佐々木さやか氏(公明党)の「同様の事案を防ぐ効果が見込まれるのではないか」との問いに、法務省側は「不同意性交罪」の適用対象となり得るとの見解を示した。

 今回の改正によって、強制性交罪と準強制性交罪を統合して「不同意性交罪」に名称変更し、不同意性交罪の要件を「同意しない意思を形成、表明、全うすることのいずしかが難しい状態」と定め、上司・部下といった関係性の悪用や突然襲われて不同意を示せないなどのケースにも適用される。

 13日の参院法務委員会で、佐々木氏がジャニー喜多川氏の性加害について、「今回伝えられている被害が不同意性交罪に該当するのではないか」と質問。松下裕子刑事局長は一般論と前置きした上で「同罪の『拒んだ場合の社会的関係による不利益』などが想定される場合には処罰が可能となる」などと答弁し、斎藤健法相は「関係府省庁会議で再発防止を確認しており、あらゆる法を駆使して性被害の根絶に取り組む」と述べた。(読売新聞)

 日本のメディアが沈黙するなかでの、この『NYタイムズ』の記事。屈辱的だが、すべて妥当な指摘で、日本のマスコミは厳しく反省し、見習うべきだろう。

(つづく)