支持率が国の赤字を積み上げる (東京都 鈴木了一)
国の金 元はといえば民の金 (千葉県 姫野泰之)
28日の「朝日川柳」より。
政府は28日、物価高に対応した総合経済対策を臨時閣議で決定。電気、都市ガス、ガソリンと灯油代の家計負担を軽減するなどとして、国の補正予算の一般会計で29兆1千億円を投じるという。財源はもちろん赤字国債だ。
はじめ財務省は25兆円という案でいたが、自民党から「もっと出せ」との注文がつき、一気に4兆円以上引き上げられたという。まさに、まずは「金額ありき」。ばらまきで人気を回復しようというのだろう。総合経済対策の規模は、国と地方の歳出と財政投融資を加えた財政支出ベースで39兆円程度となる。
「日本経済を再生する(略)高い効果のある施策」を用意したと岸田首相は言うが、大きな金額をぶち上げたうえで、中身は付け焼刃的に割り振ったとしか思えない。現状を打開するまともな戦略を政府がもたないまま、ばらまきに走っている。
この露骨な人気取りに騙されないようにしよう。
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「ロシア防衛省がウクライナの2つの機関が『汚い爆弾(ダーティ・ボム)』製造を命じられている情報をつかんだ」として、ロシア外務省がツイッターに挙げた写真。実はこれはスロベニアのARAOという核廃棄物管理の専門組織の2010年の写真だったことが判明した。
あたかも「汚い爆弾」Dirty Bombであるかのように示されたものは、ARAOの「煙探知機」だという。
ロシア政府が根っからのフェイクニュース体質であることがふたたび露呈した。
それしても、ここまで恥ずかしげもなくウソをつきまくるロシア政府に戦争を合理的にコントロールできるのか、とても心配になる。
ロシアは予備役の招集を決めたのに続き、27日、ロシア連邦議会下院は、前科者の軍隊への動員を認めるなど、軍の強化に向けた一連の法案を可決した。なりふりかまわず新たな兵力を前線につぎ込むともりだ。しかし、それでも通常兵器での戦闘に負け続けるとすれば・・・「まさか!」ということをやりかねないのではないか。
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私は山形をおよそ半月間、自転車で回ったが、9月30日、庄内の酒田市で土門拳記念館に立ち寄った。
そのとき開催されていた企画展が「2つのまなざし 江成常夫と土門拳―ヒロシマ・ナガサキ」だ。
土門拳は戦後12年たった1957年に広島に入り、被爆の実態に衝撃を受けて撮影に没頭する。翌年写真集『ヒロシマ』を発表、国内外に大きな反響を呼んだ。
土門の写真集に影響を受けた一人が、当時20代前半だった江成常夫だ。戦争をテーマにした写真で知られる江成は、1985年に初めて広島を訪れ、被爆をテーマに撮影を始める。
土門は徹底して被爆した人物を追い、江成は遺品や遺構などの「モノ」にこだわるという全く異なる表現方法だが、二人の写真から伝わってくる原爆の悲惨さに私は圧倒された。
例えば、江成の「敏行さんの革靴」という写真がある。
これは広島の爆心地から800mにいた中学2年生の横田敏行さん(14)が被爆したときに履いていた靴だ。
「全身火傷を負ったが自宅に帰りたい一心で、川沿いを歩き、途中出会った知り合いの先生に助けられ、市北部の自宅に帰り着いた。『よう帰った!』母親あきみさんと伯母、妹の晴子さん(10)は涙で迎えたが、敏行さんは体を真っ黒に焼かれ、顔は腫れて目はつぶれ、腕は皮膚がむけて垂れさがっていた。傷口にすぐうじがわくのを晴子さんが一生懸命取り除き、母あきみさんと伯母が寝ずに看病に努めた。しかし、被爆3日後、敏行さんは苦しみぬいて息を引き取った。」(写真集『被爆―ヒロシマ・ナガサキ いのちの証』より)
一つひとつの「モノ」に、言葉にできない悲惨な原爆の実態が投影されていた。
(つづく)