宗教法人を所轄する文科省は大丈夫か

 先日紹介した、中村哲先生の生き方を描く映画『荒野に希望の灯をともす』を観てきた。

日本電波ニュース社からDVDで発売されている

 1000時間もの素材をどんな編集で見せるのかと期待していったが、中村先生の「言葉」を前面に立てて、彼の思想を伝えようという意図を感じた。その言葉の一つ一つが実に重い。しかも何かを突き抜けたような清新さ、透明感も感じられる。

 印象的だったのは、末期の脳腫瘍で余命1年と宣告された次男のそばにいてやりたい気持ちを振り切って、自分が必要とされているアフガニスタンで活動する中村さんの心境。

 次男が10歳で亡くなった翌日。
「翌朝、庭を眺めると、冬枯れの木立に一本、小春日和の陽光を浴び、輝くような青葉の肉桂の木が屹立している。死んだ子と同じ樹齢で、生まれた頃、野鳥が運んで自生したものらしい。常々『お前と同じ歳だ』と言ってきたのを思い出して、初めて涙があふれてきた」(中村哲

 息子の弔い合戦として中村さんは、世の中の不条理に一矢報いるためにいっそう強く闘うことを誓う。

 私は中村先生を深く尊敬していて、ノーベル平和賞にもっともふさわしいのは中村哲だと生前から思ってきたが、映画を観てあらためて彼の人間力に敬服した。

 中村哲先生を21年にわたって撮影してきた監督の谷津賢二さんは連日、「ポレポレ東中野」でトークに出ずっぱり。きょうはジャーナリストの安田菜津紀さんを相手にトーク。谷津さんしか知らない先生の秘蔵エピソードがおもしろい。

トークイベントの谷津賢二監督

 中村先生は、クレヨンしんちゃんが大好きで(!)、漫画本10冊くらい現地まで持ってきていたとのこと。会場が笑いにつつまれた。

 平和について思索を深めることができるこの映画、お勧めです。
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 統一教会については「空白の30年」などと言われ、報道も非常に少なかったので、とくに若い人にはなじみがないという。

 私の学生時代には統一教会は「身近」だった。「原理研」という統一教会の学生向けフロント組織が活動していて、よく論争をした。キャンパスの中には販売部隊も活発に動いていて、「一和」という統一教会フロント企業高麗人参茶を、私の後輩が高値で買わされたこともあった。

 自己啓発セミナーのような合宿で洗脳された東大生の友人もいた。田舎出で、酒を飲むとカンツォーネを唄い出すとても真面目な男が、目付きまで変わってしまい驚いた。

 先週15日のテレ朝「モーニングショー」に、かつて東大生で11年間統一教会の信者だったという仲本昌樹氏(金沢大学教授)が登場した。有名大学、とくに東大の学生が狙われたようだ。将来、各種の重要なポジションに就くことを期待してのことだろう。

15日の「モーニングショー」より

 仲本昌樹という名前をどっかで見たことがあると思ったら、たくさん本を書いている哲学者ではないか。

仲本氏の本にこんなのもある

広島から上京して東大に入学した仲本さん。
「自分よりはるかに優秀そうに見える学生が多く、(自分は)落ちこぼれるかもしれない。大学を退学して地元に帰ることもできない。そうやって自分の場所についていろいろ妄想しはじめたときに原理研究会が私に声をかけてきた」という。
オウム真理教もそうだが、真面目な人がカルトにやられてしまうことについてはまた稿を改めて考えよう。

 先週のTBS「報道特集統一教会と政治の関係について特集していた。

 ジャーナリストの鈴木エイトさんが、昨年9月に安倍元総理が統一教会関連団体UPFのイベントにビデオメッセージを送ったことは一つの転機になったと指摘する。

鈴木エイトさん。(報道特集23日より)

「(これまでは)一方的に安倍さんを支持しているというだけにも捉えられる。そういうのが全部覆ったのが、去年9月のビデオメッセージだと思う。安倍さんはその関係をもう隠さなくなった。これが公表されても、自分の政治生命、選挙、自民党には何の影響もないということをあそこで判断したんだということに驚いた」。

 このビデオメッセージはYoutubeで確認できるが、まるまる5分もあって、ちょっと挨拶したという程度のものではない。全面的に肩入れしているわけで、UPFの大宣伝に使われてしまう。

 前回のブログで鈴木さんが、統一教会(と関連団体)と関係をもつ国会議員が100人超いることを調べ上げたことを紹介したが、「清話会(安倍派)が一番飛びぬけて多かった」という。やはり統一教会と政治の関係では、安倍氏がその中心にいるようだ。

安倍氏が少なくとも6回表紙を飾ったという(鈴木さんによる「報道特集」)

 統一教会側の狙いについて鈴木さんは―

「政治家が一番欲しがっているのはマンパワー。選挙のときに動いてくれる運動員、後援会組織。それを無尽蔵に提供してきたのが旧統一教会
統一教会側は)見返りとして組織の体制保護。国会の追及から守ってもらえるという狙いがあったと思う」と語る。

 旧統一教会が、知れ渡った悪名からイメチェンするために画策して2015年に「世界平和統一家庭連合」と改名を実現するが、その時の文科相下村博文はその前年14年に『世界日報』の月刊誌に記事を掲載していた。

TBS「報道特集」23日より


 この改名に関連して、所轄する文科省統一教会が食い込んでいる「日刊ゲンダイ」が報じている。

《“汚染三役”がメスを入れられるのか──。霊感商法合同結婚式の被害など数々の問題が再燃している旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)。改めて宗教法人としてふさわしいのかが問われているが、所轄する文科省の政務三役5人のうち、4人が旧統一教会と関わりを持っていた。旧統一教会が文科族議員を手なずけようとしていた実態を探る。

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末松文科相は先週、教会関係者によるパーティー券購入の事実を認めた。2020年、21年に計4万円分を購入していた。また、教会関連のイベントに複数回、祝電を送っていた。末松氏は「常識の範囲内で何らやましいものはない」と開き直った。

17年と19年の関連団体のイベントに出席した池田佳隆副大臣は、17年の挨拶では旧統一教会総裁の韓鶴子氏を「類いまれなリーダーシップに導かれた」と称賛している。

田中英之副大臣は2021年に国立京都国際会館で開かれる予定だった関連団体のイベント(開催されず)のチラシに世話人として名を連ねていた。本人ではないが、高橋はるみ政務官の弟である富山県の新田八朗知事は2年前の知事選で、旧統一教会からの支援を受けていたことを白状している。

統一教会の取材を続けるジャーナリストの鈴木エイト氏が言う。

下村文科相時代の2015年に、文科省の外局である文化庁が法人名変更を認めた問題がクローズアップされています。また、今でも続く統一教会の問題が改めて明らかになり、場合によっては、宗教法人格を剥奪する必要も出てくるでしょう。所轄庁である文科省の役割は極めて重要ですが、末松文科相以下、この政務三役が統一教会の問題に切り込めるとは到底思えません

末松氏は、信教の自由を盾に「文科省が(旧統一教会に)立ち入って(問題を)指摘することは極めて抑制的であるべきだ」との慎重な姿勢を示している。

■有利にするため族議員に接近か

鈴木エイト氏が作成したリストを参考に、第2次安倍政権以降の旧統一教会と関係がある「文科省政務三役」をピックアップした(別表)。旧統一教会の“毒手”が張り巡らされているのがよくわかる。

統一教会が文科族や政務三役に就任した議員に積極的に接近していたのは事実です。統一教会の都合のいいように行政が歪められなかったのか、検証が必要です」(鈴木エイト氏)

闇は深そうだ。》(日刊ゲンダイ26日)

 さらなる追求を―