きのうが立春。
八十八夜や二百十日などはこの日から数えた節目で、立春は農作業の基準日になってきた。この日から最初に吹く強い風を「春一番」と呼ぶ。「春一番」と聞くと、私くらいの年代の人は、キャンディーズを思い起こすのでは。
実際は「立春」は、今が冬のピークで、これから春に向かうという意味だという。つまり立春、立夏、立秋、立冬はそれぞれ一つ前の季節の最盛期で、ここを境に次の季節へと向かう分岐点なのだという。
初候は「東風解凍(はるかぜ、こおりをとく)」。9日からが次候「黄鶯睍睆(うぐいす、なく)」。14日から末候「魚上氷(うお、こおりをいずる)」。冬のピークに春を感じられるかは、私たちの観察眼と感性次第ということだろう。
昨年末、日本のコロナ感染がおさまっていたころ、欧州各国で連日10万人超のコロナ感染者が出ているとのニュースに、大変だなあと同情しつつ、よそ事のようにも感じていた。ところが、今や日本で一日10万人の新規感染者を出す事態になっている。
私の知人にも感染者が出て、他人事ではなくなっている。状況がどんどん変化していく。
東京から沖縄に行くとき、空港でコロナの検査を受けた。
無料の検査もあるが、結果が出るまで時間がかかるので、私たちは有料で。(抗原検査とPCR検査のセットで3300円)
抗原の方は30分で「陰性」と結果が出たが、PCR検査は4時間かかるとかで、結果は那覇空港に着いてからメールで知らされるという。
オミクロン株の場合、PCR陽性者の3割が抗原検査では陰性になった、つまり抗原検査は当てにならないとのニュースがあったので、安心できない。メールを見るまでは不安だった。
PCRも陰性だったからよかったものの、もしPCR陽性となれば、取材には行けないし、飛行機に乗れなくなるので東京に帰ることもできなかったはず。出発前に結果が出るよう改善してほしいものだ。
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3万5千人の原告団が28日に提訴した「嘉手納爆音訴訟」。
「嘉手納」といえば、米軍の極東最大の空軍基地だ。嘉手納町、北谷町、沖縄市にまたがる広大な面積を占め、滑走路のほか、米軍用の住宅やスーパーやゴルフコースなど全部入れると、甲子園球場の500個分(2000ha)もある。そこに軍人・軍属が約1万人、その家族が2.2万人住んでいる。
嘉手納町にとってみると、町の83%が基地に奪われている。残り17%の土地に約1万4千人の町民が住む。この基地で土地を奪われた地主は7000人を超えるという。
雨の中、バスで「爆音訴訟」の現場、嘉手納米軍基地に向かった。目指すは、「道の駅かでな」。
ここは基地見学には定番の場所で、改築なったばかりの4階の新展望台からは基地が一望できる。
1月25日の『沖縄タイムス』によると、「嘉手納町は24日、今月14日に開放された道の駅かでな4階の新展望台でのメディア関係者の利用を禁止した」という。いやらしい取材制限だが、私は一個人として来たので関係ない。
展望台に立つとすぐに、体に突き刺さるような爆音が響いてきた。
2機の戦闘機がタッチアンドゴー訓練で基地のすぐ上空を通過したのだった。
タッチアンドゴーとは、航空機が滑走路に触れた(Touch)後、再び加速(go)して離陸する。地上すれすれで急上昇する場合もある。飛行訓練の必須科目とされる。
低空で近づいては急上昇して飛び去り、再び旋回して戻ってきてタッチアンドゴーを繰り返す。急上昇でエンジンをふかすとき、とくに激しい爆音をたてる。
戦闘機だけでなく、輸送機やヘリコプターなど、さまざまな種類の航空機がひっきりなしに離着陸する。ここにはおよそ100機の米軍機があるという。
展望台には長いレンズのカメラをもつ常連らしい人が3人ほど。
一斉にカメラを向けたので、聞くと「外来機のようだ」という。岩国などから飛来してくる飛行機を狙っているようだ。
騒音訴訟の原告が、騒音で会話が中断されると言っていたが、タッチアンドゴーの急上昇の時にはエンジンをふかすので、耳をふさぎたくなるほどの爆音をたてる。内臓が震えるような不快感がある。
基地にぴったり隣接する集落が屋良で、そこには小学校もある。この爆音に夜や早朝まで晒されるのはたまらないだろう。電車の音ならうるさいのは線路際だけだが、空からの爆音は被害を受ける人の数が膨大だ。
ここに住んでみないとわかりませんと原告の一人が言っていた。たった2時間ほどいただけで住民の苦悩が十分に理解できたとはとても言えないが、すこしはその大変さを想像できた。
今回の「第4次嘉手納爆音訴訟」では、住民たちが基地を離着陸する米軍機の騒音などで睡眠妨害や健康被害、子どもの成長への悪影響などを受け、憲法が保障する人格権や平和的生存権などが侵害されているとしている。
その第一の請求は、毎日午後7時から翌午前7時までの間、航空機の離着陸とエンジン作動を一切しないこと。昼間を含めた一日の騒音が、Lden(エルデン、時間帯補正等価騒音レベル)45デシベルを超えないことなども求めている。
損害賠償請求額は、一人月額5万5千円とし、爆音差し止めの判決が出るまでの将来分の賠償も求めている。
1次から3次までの判決は、夜間・早朝に騒音を出すことの違法性を認め、過去に生じた被害の損害賠償は認めたものの、飛行差し止めについては司法判断を回避、国は米軍の運用を制限できる立場にないとして退けてきた。
今回の原告団はこれまで最大の8市町村の3万5566人におよび、嘉手納町では町民の半数が原告になっている。
一番の願いである飛行の差し止めが認められてほしいが、同時に植民地と見まがう「日米地位協定」の改正へもつなげたい。
沖縄滞在中の1月31日、米軍は、コロナ対策として10日から実施していた米軍関係者の基地施設・区域外の行動制限を終了すると発表した。不要不急の外出制限と夜間の外出禁止措置を解除するという。在沖米軍では連日三桁の新規感染者を出し続けているにもかかわらず、である。
次に向かったのは、世界一危険な米軍基地、「普天間」だ。
(つづく)