節気は大暑。
22日からが初候「桐始結花」(きり、はじめてはなをむすぶ)
28日から次候「土潤溽暑」(つち、うるおうてむしあつし)
8月2日から末候「大雨時行」(たいう、ときにふる)
猛暑が続く。ウナギでも食べようか。
万葉集にも、夏に滋養をつけるのにウナギがいいとあるそうだ。昔から食べられてきたのだな。
石麻呂(いはまろ)に われ物(もの)申(まを)す 夏痩(やせ)に良(よ)しといふ物そ 鰻(むなぎ)取り食(め)せ
これは、あの有名な大伴家持が、親しい友人の石麻呂という人に贈った歌。
訳は「石麻呂に私は申し上げたい。夏痩せによいというものですよ。鰻をとって召し上がりなさい。」(奈良県のHPより)http://www.pref.nara.jp/44177.htm
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最近おもしろく観た番組に、BS1スペシャル「ワクチン接種 自治体の叫び~埼玉 対策チームの4か月」(6月26日放送)がある。
私は再放送で観たが、タイトルのとおり、埼玉県のワクチン対策チームに長期取材したドキュメンタリーで、ワクチン接種をめぐって自治体で起きている事態がリアルに描かれていた。
埼玉県では1月1日に、県庁の一画に、ワクチン対策チームを立ち上げた。リーダーの秋田大輔(47)以下、全員がさまざま部署から集められた32人。734万人と全国5位の人口を抱える埼玉県でワクチンを接種するというまったく新しい業務で、激務になりそうだと若手中心で構成されている。チームは、国と接種主体の63の市町村との間に入って情報を共有し、調整するのが役目だ。
2月12日、ファイザー製ワクチンが日本に到着した。この時点での接種対象は医療従事者で、高齢者への接種の日程は立っていなかった。
供給スケジュールが分からないまま、市町村には、とにかく大量のワクチンを打つ体制をつくれと号令がかかるも、フタをあけたらワクチンは来ないという問題が出てきた。
4月12日に埼玉県で高齢者向けワクチン接種がはじまるが、その週に打てるワクチンは190万人の高齢者に対して、わずか978回分。63ある市町村のうち、さいたま市だけに配っただけだった。4月中旬までに供給できた自治体はわずか11だった。
そこに突然の状況変化が。国から「5月には大量のワクチンが届く」と通知がきた。はじめの2週で13万回分、次の2週で64万回分を、6月末までに全高齢者分のワクチンを届けるというのだ。こんどは、さばききれないほどの大量のワクチンを短期間に打たなくてはならなくなった。市町村はパニックになった。県の対策チームは、市町村の担当者にオンライン説明会を開く。なんとか8月末までに高齢者の接種を終えたいとリーダーの秋田。
ところがそのわずか1週間後の4月23日、菅首相がいきなり「希望する高齢者に、7月末までに2回の接種を終えるようにする」とぶち上げた。
「せっかく準備が終わってこれから、という時に、スケジュールを前倒ししろ、と言われている」とぼやく秋田。
さらに国からすぐに、いつまでに高齢者への接種を終わらせることができるかとの問い合わせが県にきた。「明日までに回答せよ」という。チームは手分けして市町村に電話をかける。しかし、ら7月末までにがんばって終えられそうなのが63市町村中14。
ワクチンが大量に来るとは言われても、何月何日に何回分という供給スケジュールがわからないままでは、打ち手の確保など体制づくりにはやや安全策を採るところが多かった。
さらにこのあと、国が突然、設置を決めた大規模接種センターとの予約の重複問題や、県独自の集団接種会場の立ち上げなど、つぎつぎに難問への対処を迫られる。対策さチームはスタッフをさらに8人増やして連日深夜まで業務に追われる。秋田は3日間帰宅しないことも。
最後には、オリパラの警備にあたる警察官4500人に接種するという課題が飛び込んできた。「むちゃ言ってくれるよ」とげんなりするスタッフだが、リーダーの秋田の、「やるしかない」とさらにがんばる姿で番組は終わる。
自治体の公務員の奮闘ぶりには頭が下がり、応援したい気持ちになる。
ワクチン接種がうまく進まないのを県や自治体の「お役所仕事」にあると批判する市民が番組には登場していたが、自治体の公務員たちがかわいそうだ。
それにしても国の朝令暮改ぶりと無理難題をふっかける横暴さはひどい。
ワクチンの接種主体は市町村なのに、菅首相が突然思い付きで「7月末に高齢者2回接種を終える」と言い出した顛末には、ワクチン接種における混乱を招いている元凶はどこかがはっきり示されていた。
制作は、ドキュメンタリーでは老舗の「パオネットワーク」だった。将来への教訓とするためにも、こういう映像は記録として貴重だ。