新天皇即位と「思想犯」

 新天皇の即位を祝う一般参賀が、4日、皇居で行われ、参賀者は14万人を越えたという。
 雅子妃が元気そうでとりあえず安心した。

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 気になるのは、メディアが争うように祝賀ムードを演出していること。
 上皇上皇后が個人として立派な方だったことと、天皇制そのものへの(存否を含めた)意見は別である。天皇制についての異論が封じられるのを危惧する。

 ある週刊誌にこんな記事が載っている。
 「悠仁さまの机に刃物、思想犯を重点捜査  内部事情に詳しい者の犯行か?」(週刊朝日
 えっ、「思想犯」だって?現行刑法にこんな言葉はないはずだが・・・。


 《新しい時代、令和を迎える直前の何とも不快な事件だ。
 4月26日、秋篠宮家の長男・悠仁さまの通う中学校で、悠仁さまの机などに包丁が置かれていたことがわかり、警視庁捜査一課が建造物侵入容疑などで捜査に乗り出した》と始まる記事の中に「思想犯」が何度も登場する。
 《犯人のねらいは何なのか。警視庁捜査関係者が言う。「平成から令和へ、改元直前の犯行ということで、ほぼ間違いなく、思想犯。包丁を置くという行為が、秋篠宮殿下に対する脅しのメッセージだろう」
 捜査のカギになるのは、防犯ビデオの解析だという。
 「思想犯でも右か左か、絞り込めていない。防犯カメラの映像と似た風貌の過去の思想犯をデータベースからリストアップしている。学校内には防犯カメラがたくさん設置されており、作業着姿の男の映像はバッチリ写っているようだ。ただ男はヘルメットをかぶっており、顔がわかりにくい。街宣活動などで上京した思想犯などが関わっていないか、宿泊施設も捜査している。」》
 《思想犯であれば、逮捕しても発表されない可能性もあるという。》 
 《警視庁では防犯カメラの解析による男の割り出しと、思想犯のチェックとの両面から捜査を行っている。(本誌取材班)》
https://dot.asahi.com/wa/2019042700025.html?page=1

 「思想犯」とは、「国家体制に相反する思想に基づく犯罪。また、その犯人。特に、もと治安維持法に触れた犯罪、およびその犯罪者をいう」。(デジタル大辞泉
 治安維持法といえば、天皇制を変革しようとする者、共産主義者を取り締まるための法律で、「第一条〔1〕国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」とされ、その後改正を経て、最高刑が死刑になり、さらに結社の「目的遂行ノ為ニスル行為」をなした場合には同法で処罰する旨の規定(いわゆる目的遂行罪)が加えられた。
 ここから際限なく「思想犯」が拡大解釈されて、労働運動や文化・教育活動にまで大弾圧が及んだ。具体的な犯罪行為がなくても、思想だけで(それも共産主義でもなんでもない思想の持ち主まで)逮捕、拘禁され、拷問により多くの犠牲者も出た。

 結果として、国民の思想の自由が剥奪されたまま戦争に突入していったのである。
 
 上皇上皇后は、天皇の名のもとに膨大な人命が失われた「先の大戦」の慰霊の旅を繰り返すことで「国民統合の象徴」としての信頼を得た。
 令和の時代には、ここから進んで、かつて天皇制=「国体」維持を理由に理不尽な弾圧を受けた犠牲者が名誉回復されることを希望する。

 それにしても、朝日新聞の週刊誌記事が「思想犯」という言葉を当たり前のように(カッコもつけず)使うとは・・。そして警察には思想犯の「データベース」もあるらしいのにこれに疑問を呈してもいない。SNS上でも、あの朝日新聞までが・・と驚きの声が上がっている。
 一気に天皇ファシズムの時代に逆戻りするとは思わないが、まともな歴史感覚がジャーナリズムからも失われていくのか、と愕然とさせられる。