コスモロジーの創造2

 連休で閑散としたオフィス近くの本郷通り。植込みのツツジが咲き、銀杏の若葉が清々しい。

f:id:takase22:20190429114314j:plain

    雨のぱらつくなか、ウツギも咲き始めた。ウツギの花が卯の花で、4月を卯月というのは卯の花からきているという。

f:id:takase22:20190430140941j:plain

・・・・・・・・・・
 テレビは平成から令和へのカウントダウンに向け、どこも特番を組んでいる。天皇、皇后の事績が繰り返し紹介された。天皇自ら退位を言いださなければならなかったり、秋篠宮の「大嘗祭(だいじょうさい)」をめぐる宮内庁批判(https://biz-journal.jp/2018/11/post_25754.html)もあったのだから、皇室のあり方への疑問や批判もあってよかったと思うが、称賛で埋め尽くされた。今上天皇と皇后が立派な人であることは日本にとって幸運だったが、そのことは今の天皇制のあり方を批判し議論することを妨げないはずだ。
・・・・・・・・・・・
 今日の新聞に、池澤夏樹さんが「ニュートリノの未来 成果は好奇心の先に」というエッセイを載せ、スーパーカミオカンデについてこう書いている。
 「さて、この種の巨大な装置は何の役に立つか。(略)ニュートリノ重力波もさしあたり何の役にも立たない。最後まで知的好奇心の対象で終るかもしれない。」


 しかし、宇宙の成り立ち、歴史を解明することは、知的好奇心を満足させるにとどまらず、世界観、人生観に大きな影響を与えうると思う。

 『21世紀こども百科 宇宙館』(2001年小学館)という本には、「宇宙のはじまり」として、「わたしたちの住んでいる宇宙は、最初から今もようなすがたではありませんでした。宇宙は、およそ150億年前に大ばく発をおこして生まれたと考えられています。無限のように思える宇宙にも、はじまりがあったのです」(P23)
 ビッグバン理論にもとづき、ここでは宇宙の創発からの歴史は150億年とされていた。
 2003年、NASAが137億年プラスマイナス2億年まで絞り込んだ。『137億年の物語』(文藝春秋社)という本が本棚にある。
さらに2013年、欧州宇宙機関(ESA)が138億年と発表、今ではこれが広く認められている。

 この宇宙は極微の一点(10のマイナス34乗センチ)から急膨張し、138億年かけて、1千億超の恒星を含む天の川銀河のような銀河を1千億超有する膨大な質量と大きさにまでなったのだ。
 ゴム風船を膨らませることになぞらえれば、宇宙がいくら巨大になったとしても、一点から広がったのであるから、一つである。
 遠くに見える星々は、我々とは関係ない物に見えるが、もともと一つであり、今も一つである。
 138億年前の極微の一点にはまだ物質はなかった。膨大なエネルギーが広まる過程でクオークが生じ、さらに陽子そして宇宙創発から10万年たって水素原子ができる。水素原子は次第に重力で引きあって集まり、宇宙創発から1千万年から3千万年ほど経って星となった。星の深部は巨大な圧で水素原子を陽子と電子に分離し、原子番号2のヘリウムを作る。この核融合で星は高温と光を発する。星の核融合は鉄Feまでの元素を作り出し、星が寿命を迎えると超新星爆発を起こしてさらに複雑な重い元素ができる。こうして作り出された元素、特に水素、炭素、窒素、酸素などで私たちの体ができている。
 子ども向けの本にも「私たちは星の子」という表現が出てくるが、まさにそのとおりである。
 ビッグバンとその後の宇宙の歴史から、宇宙には始まりがあり、もとは一つで、その進化の末に私たちが生まれたのだということを認識することができる。
 宇宙のなかに、「たまたまでてきた」「関係ない」「バラバラの」ものなどないのだ。