再びジャーナリストに旅券返納命令(その2)

 4日、ちょうど立春の東京は、最高気温が18度を超えて暖かかった。旧暦では立春は一年の始まり。八十八夜や二百十日立春から数えた節目で、農作業の目安にされた。24節気の最初の節で、この日から春ということになる。立春以降、最初に吹く強い風を「春一番」というが、立春当日、北陸では春一番が吹いたとニュースで報じていた。
 4日から初候「東風解凍」(はるかぜ、こおりをとく)、9日から次候「黄鶯睍睆」(うぐいす、なく)、末候「魚上氷」(うお、こおりをいずる)が14日から。

 

 さて、フリージャーナリスト常岡浩介さんの旅券返納命令事件。

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(朝日新聞5日夕刊 メディアも取り上げ始めた)



きのうも旧知のフリーランスから電話があり、憤懣やるかたない口ぶりで「先進国でこんな国ないよ」と嘆いていた。
 「ある国で社会問題の取材に突っ込んでいって、その国の政府の逆鱗に触れた結果、オレが入国禁止になるかもしれない。そういうとき、日本の政府は日本人ジャーナリストを支えるのが筋じゃないのか。どっかの国で入国禁止されたからと日本国の旅券を取り上げるなんて、シリアスな取材は一切するなということだよ」。最後に、「これを見過ごすと商売上がったりになるから、闘わなくては」と強い危機感を持っていた。

 常岡さんの場合、オマーンで入国禁止になっているから、旅券法の文言上は旅券返納命令が出されてもおかしくない。では、常岡さんはなぜオマーンに入国できなかったのか。オマーンのビザも取っていたのに、なぜ?
 実は常岡さんは、オマーンの入管に友人がいて、入国拒否のウラを聞かされたという。
 「オマーン入管の友人に『ブラックリストに載っていないから入れる』という言質をもらってから出発している。それが実際に行ってみたら入れなかった。その友人に問い合わせたところ、パスポートが入管から警察に渡されていると。さらに、日本の大使館が情報を提供して警察が動いたという説明で、その時は本当なのかと疑っていたが、強制送還される際の飛行機に乗る時にスリランカ航空の人が『なぜ日本大使館の人がここに来ているのか』と聞いてきた。日本大使館は邦人保護のため、捕まった日本人が安全な状況であるかや健康状態を確認することはあるが、その場合は本人に聞く。しかし、私に一声もかけず遠くから見送ったということで、非常におかしな行動だった」(abmaTVでの常岡さんの発言)
 出国予定の前日、警察から常岡さんに電話がかかってきた。また奥さんにもその前日に常岡さんはどこにいますかと警察が尋ねてきたという。

 常岡さんの情報が正しいとすると、入国拒否はオマーン政府が独自に決めたのではなく、日本側から働きかけた結果ということになる。しかも、外務省というよりは警察が主導で、常岡さんを治安上の取り締まり対象として、行動の自由を奪おうとしたのではないか。
 そこで思いだしたのが、常岡さん以外のジャーナリストも、日本政府の働きかけによって中東で入国拒否に遭ったと思われる事例があることだ。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20151228

 気に入らないジャーナリストの立ち寄り先の国に、この人物を入国させないよう要請し、そのあと旅券返納命令で海外渡航ができないようにする。これが真相だとすると、もう警察はやりたい放題。日本の民主主義は相当に危ないところに来ていると言わざるを得ない。
 今回の常岡さんへの旅券返納命令は決して見過ごすことができない重大な事件である。