小暑雑感

 一年の半分が過ぎた。月は文月。節気は小暑(しょうしょ)。ということはもう暑中見舞いを出すころか。おいおい、このスピードでは残り時間がもうないな、ぼーっと生きてんじゃねえよ、と自分を叱咤したくなる。
 7日から初候「温風至」(あつかぜ、いたる)。次候「蓮始開」(はす、はじめてひらく)が13日から。18日からが末候「鷹乃学習」(たか、すなわちわざをならう)。
 いよいよ夏本番だ。
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 この間のご縁のある人についての消息など。


 7月3日は、森本喜久男さんカンボジアで廃れかけた伝統の絹織物を復興させた―の命日だった。亡くなってまる2年になる。https://takase.hatenablog.jp/entry/20170703
 森本さん亡きあと、彼が作った「伝統の森」という織物の村の活動は衰えずに続いているのはうれしいことだ。フェイスブックもひんぱんに更新されている。https://www.facebook.com/iktt.kh/
 またいつか村を訪れたいものだ。

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 ジャーナリストの常岡浩介さん書類送検された。
 《2014年に過激派組織「イスラム国」(IS)に参加するためシリアへの渡航準備をしたとして、警視庁公安部は3日、私戦予備容疑で、当時北海道大生だった男性(31)ら5人を書類送検した。同容疑の適用は全国で初めて。公安部は起訴を求める厳重処分の意見を付けた。》
 この5人の一人が常岡さん。「事件」から5年の時効切れが迫るなか警察が動いた。

 常岡さんは4月24日、旅券返納命令の取り消しを求めて国を相手に東京地裁に提訴している。https://takase.hatenablog.jp/archive/2019/04/24
 安田純平さんも帰国して旅券を申請したが発給されないままだ。渡航の自由だけでなく、言論の自由、国民の知る権利にもかかわる大事な問題だ。注目していきたい。
https://takase.hatenablog.jp/archive/2019/06/07

 

 「金正日の料理人」藤本健二さんの消息が絶えたとのニュースが、先週から流れている。
 《北朝鮮の故金正日総書記の料理人で平壌渡航した藤本健二氏の所在が、6月ごろから確認できないことが日朝関係筋への取材でわかった。日本政府も同様の話を把握しており、情報収集を続けている。
 政府関係者によると、北朝鮮当局から、国家機密に関わる情報を外部に漏らしたと疑われ、拘束されたという情報もあるという。拘束が事実なら、政府は今後、北朝鮮に同氏の解放を求めていくとみられる。
 藤本氏は、1982~2001年に通算13年間にわたり、正日氏の料理人として北朝鮮に滞在。金正恩朝鮮労働党委員長が幼い頃に遊び相手も務めた。12年7月と16年4月にも正恩氏と面会。16年夏から北朝鮮に再び渡り、平壌市内で日本料理店「たかはし」を経営していた。》(朝日新聞、6日)
 私は早いうちから彼がもつ内部情報に注目して取材していた。そのうち親しくなって一緒に飲む機会も増えた。酔うと、北朝鮮に残してきた妻子を思って泣いたり、とても公表できない驚くべき打ち明け話を聞かせてくれたものだ。彼が北朝鮮に戻ることにはリスクが伴うと心配したのだが、彼は「大将」(金正恩)を信じて移住した。
 彼が平壌に出した寿司屋「たかはし」も閉店しているという。収容所行きに近い処分でなければよいがと懸念している。

 

 尊敬する写真家、鬼海弘雄さんが、写真集『『PERSONA最終章』を刊行したことは前に書いたが、今月下旬には『ことばを写す 鬼海弘雄対談集』が平凡社から刊行される。https://www.heibonsha.co.jp/book/b455001.html
 対話の相手は、山田太一荒木経惟堀江敏幸田口ランディ青木茂池澤夏樹など。

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 鬼海さんは文章もすばらしくトークも味わい深い。「哲学する写真家」がどんな対話をするのか、楽しみだ。