朝鮮学校の「無償化」問題で地裁判決出る

 きのう、宝田久人写真展「『PEOPLE』〜旅と出会いの一瞬に人生の輝きをとらえて〜」を観てきた。
 宝田氏は日本の滝や巨樹を撮影した写真家で3年前に亡くなった。かみさんが奥様と知り合いになって、私も紹介してもらうご縁にめぐまれた。今回の展示は、宝田氏が20代のころ世界を放浪して撮ったものを並べてある。
http://www.photo-sirius.net/tenji/%E5%AE%9D%E7%94%B0%E4%B9%85%E4%BA%BA%E5%86%99%E7%9C%9F%E5%B1%95/
 
 このスペインの港町の一枚。撮影は1970年代初頭。
 漁師らしい男たちが、仲間たちとくつろいでいる。実にいい笑顔だなあ。この写真に見とれてしまった。一人ひとりに人生を語ってもらいたくなる。
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 きょう夜、早稲田大学で『対話のために 「帝国の慰安婦」という問いをひらく』(図書出版クレイン)の公開書評会にでかけた。
 朴裕河『帝国の慰安婦』(朝日新聞出版)を対話の手がかりにしようと編まれた本で、上野千鶴子、和田春樹、四方田犬彦ほか錚々たる論客が発言し、朴裕河(パクユハ)さんも特別ゲストで参加した。『帝国の慰安婦』は日本では大佛次郎論壇賞はじめ数々の賞を受賞したが、2014年に出た韓国語版が韓国で大きな問題となり、民事刑事で訴えられ裁判が進行中だ。

 とても刺激的な議論があって面白かったが、何より朴裕河さんが、和田春樹氏らの批判に謙虚な態度でしかしきっぱりと「批判は受け入れられない」と反論した様子に感銘を受けた。「様子」というのは、話す時の表情や声色、態度など全体の雰囲気だ。国会で誰がごまかしているかも「様子」で分かる。
 朴さんもいい顔をしていると思う。この書評会については別の日に報告しよう。
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 朝鮮学校を高校無償化の対象から外した国の処分を、広島地裁が適法とした判決が注目を集めている。東京、名古屋、大阪など全国5カ所で係争中の同種訴訟で、初めての判決だった。
 きょうの朝日新聞東京新聞の社説は、この問題と山本創生相の「加計ありき」発言の2本立てで、まったく重なっていた。
 朝日新聞は「朝鮮学校訴訟 無償化の原点に戻れ」と題してこの判決をとりあげた。
 朝鮮総連の『不当な支配』を受け、無償化のための支援金が授業料に使われない懸念がある」との国の主張を認めたことに対して、「朝鮮学校が総連と関係があるとしても『不当な支配』とまでいえるのか。地裁が実態の把握に力を尽くしたとは言い難い」と批判。「教育の機会を公平に保障するという制度の理念」に立ち返って、無償化するのが本来のあり方だと示唆する主張だ。
 東京新聞は「朝鮮学校無償化 子の救済は大人の責任」と題する社説。
 こちらも無償化すべしの論調で、「いわば大人の都合で、子どもの学びの機会に格差が生じるのは残念でならない。(略)大人の責任で実現せねばならない」と書く。しかし、最後で「北朝鮮は核やミサイルを開発し、日本人拉致問題の解決には後ろ向きだ。朝鮮総連を含め、国民が注ぐまなざしは厳しい。本来、子どもの教育に政治的、外交的な問題を絡めるべきではない。だが、朝鮮学校の教育内容や財務、人事といった運営を巡る疑念が晴れない限り、税金投入に国民の理解は得られにくい。子どもの学ぶ権利の救済、機会の保障はもちろん、大人の責任である」として、国側だけでなく、総連側にも「大人の責任」があると主張した。
 産経新聞は「朝鮮学校判決 独裁者崇拝に公金出せぬ」として判決を全面的に擁護した。
 いわく、「高校無償化の支給要件は『適正な学校運営』と定められている。国の税金を使う以上、当たり前のことである」。「原告側は民族教育を受ける権利を侵害するなどと訴えたが、『支給要件に該当しないためで、民族を理由としたものではない』と退けた。判決のいう通り、無償化から除かれたのは、不透明な学校運営の実態や教育内容の問題があるからだ。これを是正しないまま、差別というのは問題のすり替えにほかならない」。

 この問題については、産経の社説がまっとうだと思う。
 朝鮮学校についてはこのブログで何度も書いてきたが、生徒が金正恩を讃える歌や踊りを覚えさせられ、毎年、平壌まで公演に行かされるのは児童虐待だ。「子どもに罪はない」という言葉は、こういう学校をのさばらせないためにある。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20160229

 また、東京都のホームページにある「朝鮮学校調査報告書の概要」を参照されたい。
 《「現代朝鮮歴史」(高級部)の教科書には、「敬愛する金日成主席様」、「敬愛する金正日将軍様」等の記述が409頁中353回
◆ 「音楽」の教科書には、金日成金正日を礼賛する歌曲
朝鮮学校の職員室及び高級部の教室には金日成金正日肖像画が、初級部・中級部の教室には金日成金正日を描写した絵画が掲示
○ 高級部の生徒は「在日本朝鮮青年同盟(朝青)」に加盟。朝青は、朝鮮総連の傘下団体であり、その組織規約には、「朝青は、自己の全ての事業を総連の指導の下に進める」などと規定》
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/shigaku/sonota/files/0000000845/01gaiyou.pdf

 無償化や公的支援をいうなら、まずは朝鮮学校と総連の腐れ縁をきっぱりと断ち切り、金正恩政権への忠誠の強制などをやめさせ、まともな教育内容を保障することが先決だ。