九州北部豪雨―苗の命をつなぐ

  
 線路沿いの金網を夕顔のツルが覆っている。
 夏草の生命力はすごいな。真夏日が続く。
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 先日、福岡県朝倉市が豪雨で大きな被害が出たことについて書いた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20170710

 NHKで、福岡県朝倉市の三連水車の復旧作業始まるというニュースをやっていて、山田堰土地改良区の徳永哲也理事長が出ていた。以前より痩せていて、疲労が顔に出ているように思われる。この暑い中、不眠不休で地域のために苦労されているのだろう。

 旧知のジャーナリスト、佐藤由美さんが徳永さんに直接被害状況を聞いて教えてくれた。

《山田堰土地改良区の水田430ヘクタールのうち130ヘクタールは生育を望めない状況。三連水車を含む3群7基の水車が揚水する水田35ヘクタ−ルのうち苗が生きているのは5ヘクタールだけ。堀川用水路とそこに設置されている水車は流木と土砂で埋まり、水田への送水が途絶えてしまっている。生き残った苗が枯れないよう、一刻も早く送水するため、復旧を急いでいる。
 三連水車は朝倉市のシンボルでもあるので、できるだけ早く土砂を取り除いて水車を回し、復旧の希望にしたいと考えている。しかし、水車周辺だけでなく、堀川そのものから土砂を撤去して水が流れるようにしなければならず、苗が送水なしでもちこたえる時間との闘いになる。
 水車で灌漑している35ヘクタールの水田のうち、無事だった5ヘクタールの水田は水車から離れた場所にあるため、両者を結ぶ用水路の土砂を取り除く必要があるものの、復旧作業は効果の高いものを優先して行うので、5ヘクタールという小さな面積のために土砂の除去を優先してもらえるかどうかはわからない。
 徳永さんが市、県、国(九州農政局)を集めて話し合い、復旧作業は国の事業としてやることになり、生き残った苗の命をつなぐために、大規模かつ迅速な作業が展開されることが期待されている。》

テレビや新聞のニュースと違って、こういう具体的な情報は被害の実態が生々しい。「苗が送水なしでもちこたえる時間との闘いになる」。農業水利施設がいかに重要なものか、よく分かる。
今回、大量の流木が押し流されて被害を大きくしたが、5年前もそうだった。私は2012年7月の九州北部豪雨の一か月後に、徳永さんの案内で水害の痕を見て回ったが、橋などを破壊した多くの流木がまだ片付けられずに川岸にさらされていた。山の森林が手入れされずに荒れ放題になっているという。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120804
この5年前の豪雨では、山田堰と堀川用水が水を効果的に逃がし、最悪の事態は逃れたとされるが、今回は堀川自体も被害を受けている。堀川用水を造った江戸時代の先人には想定外の雨量だったのか。
局地的豪雨の大きな被害が相次ぐ。気候変動が強いるコストは全地球的な規模ではすさまじいものになる。