安田純平さん動画公表が示す日本の異常

takase222016-03-17

早朝、テレビ局からの電話で起こされた。
安田純平さんの動画が公表されたんですがご存じですか」
ああ、ついに出たか。

一ヵ月ほど前、安田さんの友人で、最近ヌスラ戦線と接触した人から「ヌスラ戦線は日本政府と交渉したがっている。近く安田さんの動画が出そうだ。彼らは報道機関に提供するか、Youtubeに上げると言っている」と聞いていたのだ。
日テレが抜群にはやく、朝4時にはニュースで流していた。
他のテレビ局はタリク・アブドル・ハク氏のフェイスブックの動画を使っていた。
https://www.facebook.com/tariqcham1

日テレは独自にヌスラ戦線(の代理人)から映像を受け取っているようだ。
日テレはこう報じている。
《去年から行方が分からなくなっているフリージャーナリストの安田純平さんが、シリアで武装勢力に拘束されている様子を映したとみられる映像が公開された。
 安田純平さんとみられる人物「こんにちは私は安田純平です。今日は私の誕生日である3月16日です」
 NNNが入手した映像では、安田さんとみられる男性が椅子に座り、カメラに向かって落ち着いた口調で話す様子が映っている。
 安田さんは去年6月下旬、トルコ南部からシリアに入ったとみられ、その後の行方は分かっていなかった。
 映像を提供したのは国際テロ組織アルカイダ系の武装組織「ヌスラ戦線」と関係する人物で、この人物は、安田さんは「ヌスラ戦線」に拘束されていると話している。「ヌスラ戦線」は、シリア北西部を拠点に活動し、これまでも外国人の誘拐事件をたびたび起こしている。
 この映像は、ヌスラ戦線と関係があるとされる人物のフェイスブックページでも公開されている。
 日本政府高官は、これまでに、日本テレビの取材に対し、安田さんは「ヌスラ戦線」に拘束されているとの見方を示している。》
http://www.news24.jp/articles/2016/03/17/10324960.html


朝はそのあと、新聞と通信社の電話取材があり、TBSのインタビュー撮影があった。(夜のニュースで私のインタビュー映像が短く流れたようだ。)20日(日)に放送予定が二つあり、きょうはせわしかったので「公園で15分だけね」とインタビューに応じたのだった。

ヌスラ戦線はIS(イスラム国)と同根のいわば兄弟組織だが、互いに激しい戦闘を繰り広げており、行動様式はかなり違う。これまでたくさんのジャーナリストを拘束してきたが、ISのように処刑したりはしていない。今も安田さんの他、スペイン人ジャーナリスト3人を拘束している。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20151225
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20151226
拘束期間はいろいろあるが、ヌスラ戦線に拘束されたジャーナリストは解放されている。ニュースにはなっていないが、去年12月にもポーランド人ジャーナリストが解放された
ただ、当然だが、解放交渉はすべて水面下で行われており、今回のように、拘束されたジャーナリストの動画が公開されるというケースはない。
動画公表の意味は、安田さんの友人がいうように、日本政府に対する、「早く接触してこい」というメッセージだと思う。
日本政府がテロ組織とは交渉も接触もしないという対応をつづけるなか、ヌスラ戦線が焦っているとも解釈できる。
逆にいうと、日本政府がいかに「普通でない」かを示す事態でもある。
いま、スペインでは政府主導で3人のジャーナリストの救出委員会が設置され、ヌスラ戦線との交渉(もちろん極秘の)に当たっているという。
後藤健二さんの時もそうだが、日本政府には邦人保護の姿勢が全く感じられない。
今回、動画が公表されたが、政府は何の動きも示さないだろう。政府はいま動画の「分析を急いでいる」そうだ。