デモは「テロ」だという秘密保護法案

takase222013-12-05

特定秘密保護法案が、きょう午後4時すぎ、参院国家安全保障特別委員会で自民、公明両与党の賛成多数で可決された。本会議採決は明日以降だという。
安倍内閣のごり押しの酷さにはあきれた。
前日にいきなり、さいたま市公聴会を開くという露骨なアリバイづくり。
4日には安倍首相が第三者機関として「保全監視委員会」を作りたいといい、きょうになって菅義偉官房長官内閣府に「情報保全監察室」を新設するという、付け焼刃的対応。
また、「逐条解説」が配布されたのが、きょう午前11時45分だったことをツイッターで知ったが、この高をくくった姿勢は度しがたい。
一連の過程で、公明、維新、みんなの党などの姑息さもはっきりした。

私は、拉致問題を調べる中で、国際情報戦の中での日本のあやうさにも気付かされ、何らかの対策・法律が必要だと思っている。しかし、この法案はダメだ。
法案の問題点はいくつも指摘されているが、私が懸念する一つは「テロの定義」だ。

《法案は12条でテロを定義した。全文を紹介する。
「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要し、又(また)は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう」だ。
 テロ活動の防止は、防衛、外交、スパイ活動の防止と並ぶ特定秘密の対象で、法案の核心部分だ。本来、法案の前段でしっかり定義すべきだが、なぜか半ばの章に条文を忍ばせている。それはおくとしても、規定のあいまいさが問題だ。
 二つの「又は」で分けられた文章を分解すると、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」「社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷」「重要な施設その他の物を破壊するための活動」の三つがテロに当たると読める衆院国家安全保障特別委員会で、民主党議員が指摘し、最初の主義主張の強要をテロとすることは拡大解釈だと疑問を投げかけた。
 これに対する森雅子特定秘密保護法案担当相の答弁は、「目的が二つ挙げてある」というものだった。つまり、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し」「又は社会に不安若しくは恐怖を与える」がともに「目的で」にかかるというのだ。
 ならば、そう分かるように条文を書き改めるべきだ。法律は、条文が全てだ。読み方によって解釈が分かれる余地を残せば、恣意(しい)的な運用を招く。だが、委員会では、それ以上の追及はなかった。》(毎日新聞社説11月29日)
この三つが、ANDではなくOR(又は)で接続されているのだから、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する活動は、それ自体で「テロ」とされる。
この文言だと、テロの定義に「デモ」や「集会」を含むと解釈されても不思議ではない。
石破茂幹事長が、法案反対のデモを、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」とブログで書いた。
はじめ私は冗談だろうと思ったのだが、その後の石破氏の発言を聞き、法案の12条を読むと、法案作成者は本気でそう信じているのだと考えざるをえない。
集会と表現の自由は、民主主義の基本の基本であって、この法案の文言をそのままにしてはおけない。
しかし、法案は「又は」で衆院を通っているのだ。
・・・・・・・・・・・
今夜、「国民をなめるな!」と、国会のまわりでは遅くまで抗議の人が叫んでいる。(写真)
国会正門近くで、ドキュメンタリーカメラマンの南幸男さんにバッタリ会った。抗議の人々を撮影していた。「きょうは知ってる人によく会うなあ」と南さん。
南さんが撮影したETV特集寺山修司という宇宙 園子温×穂村弘」を先週土曜に見たばかりだったので、感想をいおうと思っていたら、見失ってしまった。
抗議集会は三ヶ所で、人数の多い方から、国会正門前、参議院議員会館前、首相官邸前。私の学生時代と違うのは、組織動員された人の比率がひくいこと。仲間と誘い合って来たような人が多い。

こういう集会、デモを「テロ」とみなすのを許すわけにはいかない。