東電映像公開の茶番

6日東電が事故当時のテレビ録画映像を公開した。
ちまたでは、「オリンピックの最中を狙った」といわれているが、たしかにニュースでもあまり大きな扱いを受けていない。実態は「公開」と言ってもきわめて限定的なものである。
東京電力は6日、福島原発事故時の対応を記録したテレビ会議録の編集・加工映像を、報道用素材として報道機関に提供した。
 提供があったのは、(1)1号機の原子炉建屋爆発(音声なし、2分5秒)(2)1号機の海水注入の経緯(音声なし、3分10秒)(3)3号機の原子炉建屋爆発(音声あり、4分41秒)(4)2号機の逃し安全弁操作の経緯(音声あり、12分2秒)(5)退避にかかわる発言(音声あり、3分割計7分15秒)(6)菅総理の来訪(音声なし、37分5秒)(7)4号機と考えられる衝撃音の発生(音声なし、22分5秒)の7カ所。
 東電は同日、報道機関向けに、計150.5時間分の映像を、東電の施設内で録音・録画を禁じる形で開示した。》(東京新聞
「提供」された部分は東電HPで見られるが、記事にあるように、1時間半のほとんどが「音声なし」。
一番緊迫感のあるところは7分すぎから。
吉田所長「大変です大変です、3号機たぶん、水蒸気による爆発、いま起こりました」
本店「は、はい」
吉田「11時1分」
http://photo.tepco.co.jp/date/2012/201208-j/120806-02j.html
音声ありの部分には何度も「ピー」音が入り、映像は、人の顔にぼかしが入っている。プライバシーに配慮しました、ということらしい。こんなので「公開」と言えるのか。報道機関向けの「開示」でも録音・録画を禁じるというのだ。
東電は「公開」について、こんなコメントを出している。
《映像を公開させていただいたテレビ会議は、当社内部における本店・各発電所等との意思・情報伝達の手段であり、公開を予定して録画していたものではありません。
 今回、メディアの要請や社会的な関心の高さを等を総合的に勘案し、新しい経営陣が公開することを判断したものです。》
http://www.tepco.co.jp/cc/direct/1211554_1992.html
本来公開するものじゃないのだが、みなさまのために公開してあげたんですよ、と恩着せがましい。
巨大な刑事事件として扱うべき大事故を起こして1年半たってやっと「公開」した結果がこれである。東電がどの情報を見せるか、どれを見せないかを決めているのだ。
まさに、犯人が証拠を選んで見せている図。呆れる。
さすがに、ほとんどの新聞の社説は、すぐに全面公開せよという論調だ。
《東電会議映像 事故究明へ全面公開を(8月8日)
 東京電力は、なぜ情報公開にここまで後ろ向きなのだろうか。
 福島第1原発事故発生直後から記録された約150時間分のテレビ会議映像のことだ。
 ようやく本店で公開が始まったが、提供された映像は発生後4日間に限定。しかも一般社員のプライバシー保護などを理由に1665カ所にわたり音声を消去し、映像のぼかしも29カ所に及んだ。
 テレビ会議映像は原発事故史上、最悪レベルとなった福島事故の原因究明に向けた第一級の資料である。
 一企業の思惑で、公開の仕方を決めるべきものではない。速やかに全面公開し、再発防止や政府のエネルギー政策などに活用できるようにすべきだ。
 公開映像は東電本店と福島第1、第2原発などを結んで行われた社内テレビ会議を録画した計150時間分。本店で録画した約50時間は一部音声付きだが、福島第2原発の約100時間はすべて無音だ。
 映像には、福島第1原発3号機の水素爆発の瞬間など緊迫した場面も記録されている。
 だが、音声にかぶせるピー音があまりに多く、清水正孝社長(当時)らの発言が一部消されている疑いもある。
 菅直人前首相が東電本店に乗り込んで、14分間にわたり演説し、居並ぶ幹部に直接指示を下した場面の音声がないのも不自然だ。
 東電が公開を拒んでいる昨年3月16日以降の映像も重要だ。使用済み核燃料プールの危機にどう立ち向かったのか。高濃度汚染水の海への流出をいつ認識したのか。こうした問題の解明には欠かせない。
 東電は約150時間分の公開映像さえ、対象を報道関係者に限定し、生の映像の録音・録画を禁止。公開期間も9月7日までに限っている。
 国民が自由に閲覧できるのは、東電が報道素材用に再編集してウェブサイトに掲載した約1時間半の要約版にすぎない。
 テレビ会議映像の存在が明らかになったのは、事故発生から1年もたった今年3月だ。東電は当初、一切の公開を拒み、枝野幸男経済産業相に促されて渋々、一部公開に応じたのが実態だ。
 東電は2002年にも原発のトラブル隠しが発覚するなど、隠蔽(いんぺい)体質が染みついている。自らの原発事故調査報告書も、政府への責任転嫁に終始したとの印象が拭えない。
 このままでは、非公開部分の映像が廃棄される恐れさえある。東電が全面公開に消極的な姿勢を続けるなら、政府が強い指導力を発揮して改めさせるべきだ》(北海道新聞8日)
で、国会はと見ると、「近いうち」の解釈をめぐって口角泡を飛ばして議論している。「近いうち飲もうよ、と言われれば常識的に2週間でしょ・・・」などと。
これじゃ、オリンピック見てたほうがいいや。
しっかりしろ、日本の政治家よ!