渡辺京二が語る人生の目的 3

takase222012-07-18

北朝鮮にディズニーキャラクターの着ぐるみが登場しただけで「アメリカとの関係改善をアピールしている」などという解説が出てくるのには首をかしげてしまう。
また、ある専門家が、金日恩の傍にいる女性は妹に違いない、なぜなら金正日は妻とともに現れなかったから、と断言していたが、どうみても妻のふるまいだ。
写真は金正日告別式に現れた金日恩の妹のヨジョン。いま問題になっている丸ぽちゃの女性とは違う(と思う)。
あるニュース番組で、妻だとすると、父の金正日の路線を否定することを意味するのかとのナレーションが流れて、これも違和感が残った。
こういうのは指導者同志の「きまぐれ」であって、一つ一つ政治的な含意を騒ぎ立てる必要はないと思う。興ざめかもしれないが。
たとえば、金日成は妻をともなって公式の場に出たことはあり、金正日高英姫(コヨンヒ)を軍などの視察に伴ったことが何度もある。私が取材した元軍人の脱北者は、金正日夫妻が一緒に部隊に視察に来たのを迎えたことがあった。もっとも、視察記念の集合写真を撮ったが、後に配られた写真を見ると、金正日の隣に座っていた高英姫の姿がきれいに消されていたという。
李英鎬軍総参謀長の解任の意味は、もう少したたないと分からない。もちろん病気などではなく、「粛清」と言ってよい。ただ、北朝鮮については情報が少ないだけに、こういう変化の解釈には、解釈する人の「願望」が現れやすい。
東京新聞のきょうの社説「『北』軍高官解任」では、解任は、党が軍を抑えようとする動きで、強硬派が切られたと解釈し、
「権力闘争の過程で軍強硬派や旧世代の巻き返しがあり得るが、北朝鮮が体制生き残りをかけて改革に乗り出し、米国や中国との外交を進める兆候だととらえたい」と強い期待感漂う文章で締めくくっている。
こんなものではないと私は思うが、こんど北朝鮮への見方について書こう。
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さて、前回の続き。
渡辺京二氏は、つづけてこう語る。
人間は、この全宇宙、全自然存在、そういうものを含めて、その美しさ、あるいはその崇高さというものに感動する。人間がいなけりゃ、美しく咲いてる花も誰も美しいと見るものがいないじゃないか。だから自然が自分自身を認識して感動するために、人間を創り出したんだ。
 そう思ったら、この世の中に存在意義がない人間なんか一人もいないわけ。全人間がこの生命を受けてきて、この宇宙の中で地球に旅人としてごく僅かの間、何十年か滞在する。その間、毎年毎年花は咲いてくれる、これはすごいことでありまして、たとえばうちの庭の梅の花も、多少時期は何十日か遅れることがあっても、必ず約束したように、毎年毎年咲いてくれます。そういうふうに毎年毎年花を見る、毎年毎年、ああ、暑かった、ああ、寒かったと言って一年を送る、それだけで人間の存在意義はあるんです。
》(P223-225)
宇宙が必要だから、137億年もかけて、物質を、星を、銀河を、地球を、そして生命さらには人間を創り出してきたからには、「この世の中に存在意義がない人間なんか一人もいない」。
ほんとうにその通りだと思う。
みながこういうふうに考えれば、毎年3万人も自殺するような事態にはならないはずだ。自殺のほんとうの「原因」はいじめでも就活失敗でもなく、心の中にある。子どもたちに生きていることの意味を教えることこそもっとも必要なのだと思う。
これをすっと言えるということは、渡辺氏は、人がなぜ生きるのかをずいぶん考え続けてきたのだろう。
このメッセージは女子大生にどう受け止められたのだろうか。後日談を聞きたいものだ。