危ない地名

takase222011-12-04


菊池寛賞を受賞した新藤兼人監督のお祝いに、津川雅彦大竹しのぶら、俳優さんたちも駆けつけた。
新藤監督は車椅子で登壇して、若いころ、菊池寛とピンポンして負かされたなど、とぼけた口調で話して会場をわかせていた。お元気だが、いま99歳!
「一枚のハガキ」は“生涯最後の監督作”になるそうで、主演が大竹しのぶ。この映画、ぜひ観たい。
数年前、津川さんのドキュメンタリーを制作した縁があったので、ご挨拶しようと思っていたら、津川さんは早めに会場を出てしまい、挨拶できずじまいだった。残念。
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地名に災害の歴史が反映されている場合があることは、8月放送の報道特集「神社と津波」の制作過程で知った。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110831

そのとき、災害地名についての本を読みたいと思ったが、ほとんどは絶版で、図書館に行かなくてはならなかった。今月末、地名から大地震や大津波の歴史を読み解く『この地名が危ない』(楠原佑介著、幻冬舎新書)が出版されるという。
東京新聞の紹介記事が面白かった。
著者の地名研究家、楠原氏によると「東北の被災地には過去の津波の痕跡を示す地名が少なくなかった」という。
例えば、津波で900人を超す犠牲者を出し、仙台空港が一時使用不能になった宮城県名取市。
「な」は土地を示す古語で「とり」が土地が削り取られたことを意味する。津波が地面を削り取った土地だと氏は解釈する。すでに奈良時代にはあったそうで、平安時代貞観地震の前にも多くの災害があったのではないかという。
また、宮城県女川町、福島県いわき市小名浜など、被災地名の多くに「おな」がついている。
楠原氏は、「男波(おなみ)」という高く打ち寄せる波を、「み」を除いて「おな」と呼んだ名残と推測する。
実際、南相馬市小高区の女場(おなば)、岩手県宮古島崎山の女遊戸(おなつべ)の両集落は、海岸沿いでないのに津波被害を受けた。海のそばで「おな」がつく地名は東北地方だけでも十ヵ所を超えるという。
怖いのは、今回は損壊を免れた福島第二原発がある楢葉町波倉の解釈。
「倉」は「刳(く)る」が名詞化した語で「地面がえぐられたような地形」に使われることが多いというつまり、波がえぐった土地だというのだ。
近い将来に起きるとされる東海地震で危険が疑われる場所はというと、楠原氏はまず鎌倉だという。
「かま」は、かまどや釜の由来で、穴のようにへこんだ状態。「記録が確かな13世紀の百年間だけでも七度の大きな地震津波に襲われ、膨大な死者を出したことを語り継ぐ必要がある」。(楠原氏)
30年にわたり研究を続けてきた楠原氏は、歴史的、伝統的な地名の保存運動を展開、安易な新地名の命名には反対だという。また、ハザードマップには、「確認できる限りの旧地名を盛り込み、いにしえの人々が未来にどんな警鐘を鳴らしているのかを、考えてほしい」と語る。
そのとおり、賛成だ。
災害に関係する地名等とその由来(楠原氏による)
釜石岩手県):「釜のようにえぐられた磯」から
気仙沼宮城県):津波によっても「消せない」との願望から
芋川新潟県):「埋もれる川」。中越地震震源に近い山古志村から南流
妙見新潟県):損壊するという意味の「めげる」から。中越地震で山崩れが発生
(神戸市):地面が大きな力で「なでられる」「なだれ」から。阪神大震災で被災
桜島(鹿児島県):噴火口が「裂ける」から
普賢岳長崎県):「吹けぬ(噴火しない)ように」との願望から
加賀(石川県):自然の力で「欠け」た土地の意味。波により多くの崖ができた

地名も先人からのメッセージとして読み取ろうということだ