菊池寛賞贈呈式にて

takase222011-12-03

石巻日日新聞が菊池寛賞を受賞し、きのう、ホテルオークラ東京で贈呈式があった。
新聞社からは武内宏之報道部長一人が上京。「小さい新聞社なので、たくさん来たら新聞出せなくなる」からだという。
それで(さびしくないように)、私も光栄にも「お付き」として招待された。
今年の菊池寛賞に選ばれたのは;
津村節子−作家、夫・吉村昭の死までを『紅梅』で描いた
新藤兼人−映画監督、99歳の今年、『一枚のハガキ』を完成させた
石巻日日新聞と河北新報−大震災で被災しながら地元新聞社として役割と責務を果たした
前新(まえあら)透「竹富方言辞典」(南山舎)琉球語と日本語の古層、民俗を研究するための貴重な文化遺産
澤穂希−日本女子サッカーの歴史を切り拓いた
水戸岡鋭治―今春開通の九州新幹線など斬新な鉄道デザインを手がけてきた

澤さんと2ショットを撮りたいとカメラを持っていったのだが、練習などの予定があって出られないとのアナウンス。ビデオでの挨拶が流された。
澤さんを一目見たいと思う人は多かったようで、会場に失望がひろがった。でも、人気の出た一流アスリートが、各種の催しやCM、バラエティなどに引っ張り出されてダメになることがよくある。残念だが、これでいいのだ。

武内さんは、ステージで、「震災がなければこの受賞もなかった、賞を亡くなった方や被災者に捧げます」と挨拶した。武内さんらしい。
石巻日日新聞とともに受賞した「河北新報」も、被災し、数々の困難に直面しながら新聞を出し続ける奮闘が評価された。
河北新報報道部長の武田真一さんが、震災直後、新聞を届けると泣き出した読者がいたという話を披露して、「新聞はライフラインだと知った」と言ったのが印象に残った。
河北新報のいちばん長い日』という本が先月出されたという。さっそく読んでみよう。
福島に住む人によると、原発事故、放射能汚染などについて、「福島民放」、「福島民友」が地元に必要な情報をきめ細かく記事にして、あらためて見直されているそうだ。震災後、地域紙の存在が光っている。

「竹富方言辞典」は、27年かけて採集した方言を収録し、日本最南端の出版社から刊行されたという。南山舎のHPに;
ムニバッキター(言葉を忘れたら)
シマバッキ  (生まれ島をも忘れ)
シマバッキター(生まれ島を忘れたら)
ウヤバッキルン(親までも忘れる)
という前新(まえあら)さんの言葉が載っているが、竹富方言は沖縄語のなかでも非常にユニークらしい。http://jaima.net/modules/guide6/content/index.php?id=145
いま島の住民はわずか300人。
09年、ユネスコが世界で約2500の言語が消滅の危機にさらされていると発表し、武富方言を含む八重山の島言葉は「重大な危機」にあると分類された。
山形でも若い世代は方言が話せなくなっている。方言の消滅は急速に進む。これは固有文化が消えていくことにつながる。
方言をこうして辞典に残すことは非常に意味のある仕事だと思う。

私の知らないところで、実にたくさんの様々な人ががんばっているんだなあ。
当たり前だけど。