横田めぐみさんについての情報が立て続けに出てきた。
一つは先月の、04年ごろの生存を伝える脱北者情報。
《北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんについて、韓国在住の脱北者の男性が、2004年ごろに生存していたと証言していることが9日わかった。
この脱北者から情報を得た韓国の野党・自由先進党の朴宣映(パクソンヨン)議員が明らかにした。
この脱北者は北朝鮮にいた時、朝鮮労働党で日本担当とされる人物から「めぐみさんは生きているが、多くのことを知りすぎており、日本に帰すことができない」と聞かされたという。
北朝鮮は04年11月の日朝実務者協議で、めぐみさんの「遺骨」を日本側に提供したが、担当者はこれについても「偽物」と証言。さらに、めぐみさんのほかにも拉致された日本人女性が4人いると話したという。》(読売新聞10月10日)
次は、めぐみさんの娘が結婚したという情報。
有田芳生参議院議員が横田夫妻に伝えた経緯をブログに書いている。
《10月13日昼前。衆議院議員会館の会議室で民主党拉致対策本部の会議が行われた。北朝鮮からの脱北者が横田めぐみさん生存情報を語ったことが韓国から報じられたことに関する会議だった。そこでは外務省による報告も行われた。この集まりに横田夫妻も招かれていた。終了後に立ち話をしたとき、滋さんからこんな話を聞かされた。「中井さん(注、中井洽元拉致担当大臣)からヘギョンちゃん(ご夫妻はいまでもこう呼んでいる)が結婚したという情報があると聞きました」。おそらく前週に韓国を訪問した中井さんがどこかで聞き及んだものと思われる。なぜ横田さんが私にこういう話題を語ったのか。それには理由がある。ある課題をめぐって横田夫妻とは何度も話をしてきた。そのときウンギョンさんがいまどうしているかわからないと聞いた。そこで私は彼女の消息を調べる約束をした。あるルート(朝鮮総連ではない)でウンギョンちゃんの現状が正確にわかったのは2月のこと。
金恩慶(キム・ウンギョン)
1987年9月3日生まれ
09年 金日成総合大学コンピューター科学大学卒業
現在 国家科学院開発総局研究員
家族 実父 義母と平壌在住
(注)日朝政府は誕生日を「9月13日」としているが、私が入手した情報では「3日」になっている。
私はこの情報を横田夫妻にお伝えした。「これまで政府はこうした消息をお伝えしなかったのですか」と訊ねると「まったくありません」という。おそらく被害者家族の関心を満たすきめ細かな情報収集を行っていないのだろう。ご夫妻のウンギョンさんに対する思いは詳しく聞かせていただいた。とくに早紀江さんの「ある願い」は祖母ゆえの、しかし私にとってはとても新鮮で重要なものであった。そして今回の中井情報である。私は情報を確認することにした。詳しいことは明かせないがウンギョンちゃんは9月に結婚していることが知らされた。そこで逡巡した。先日のめぐみさん生存情報についていえば私には疑問があった。間接情報の積み重ねによる曖昧な情報を横田夫妻が知ることで心痛を与えるのではないかと思ったからだ。ましてやそこに北朝鮮当局の意図が隠されている可能性もある。信頼できる「同志」の高世仁さんに相談した。横田夫妻と長年のつき合いのある高世さんは「伝えるべき」との根拠をいくつかあげた。
札幌から電話をしたのは30日に夕刻。早紀江さんにあらましをお伝えした。お知らせするかどうか迷ったことを正直に伝えると早紀江さんは言った。「(結婚は)ありえるなと思っていました。これからも何でも知らせてください。なるようにしかなりませんから」。「なるようにしかなりませんから」……。会話のなかで早紀江さんはなんどかこの言葉を繰り返した。「怒りを根拠とした達観」。私にはそう思えた。横田めぐみさんをはじめとする拉致被害者を一刻も早く日本に取り戻さなければならない。そのためには日本政府が本気で戦略的・戦術的に北朝鮮と交渉していくことだ。そのプロセスでは韓国も巻き込んだ情報戦が繰り広げられるだろう。外交とはそういうものだ》http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2011/11/post_c7d3.html
そして、05年の平壌市民のデータに彼女らしい人物の情報が載っているとの韓国メディアの発表だ。
これについては、次の「救う会」の西岡力会長のブログが興味深い。
《11月7日、週刊朝鮮編集部が、横田めぐみさんと思われる人物が平壌市民210万人データのなかに記載されていたという自誌の報道内容について、記者会見を開いた。日本言論などからあまりに多数の問い合わせがあったので、会見をして説明することにしたという。
その時配布された資料をソウルから送ってもらった。資料にはデータの原本の内容が添付されていた。それを見ると、確かに、ハンソネという女性はめぐみさんと同じ1964年10月5日生まれで、配偶者は金英男とされ、金日成総合大学学生の金ウンギョンと同じところに住み、公民証番号がウンギョンと一番違いで家族であることが分かる。
ただし、めぐみさんの娘、金ウンギョンの名前でデータを検索するともう1人と同じ名前の金日成総合大学の女子学生が出てくる。
ハンソネと同居しているウンギョンは、1987年8月25日生まれだが、もう1人の金日成大学生金ウンギョンは1987年9月13日生まれとなっている。北朝鮮が2002年日本に通報した資料によると、めぐみさんの娘は1987年9月13日生まれとされていたので、後者と一致している。
9月13日生まれのウンギョンは、金チョルジュンと同居している。金チョルジュンという名前は、北朝鮮が2002年日本に通報した資料でめぐみさんの夫とされていた。ただし、データではこの金チョルジュンは1959年7月17日生まれとされており、金英男さんの生年月日とされている1960年8月25日とは一致しない。
平壌市の保衛部作成の住民登録データが外部に持ち出されているという話しは昨年夏頃から情報関係者の間で広がっていた。私もそのデータの一部を見たことがあった。それと、今回、週刊朝鮮が入手したデータは様々な特徴から同じものだと見られている。つまり、だれかが偽造したものではなく、本物である可能性が高いと現段階で私は見ている。ただ、週刊誌の報道や記者会見資料だけではやはり最終判断は下さない。データ現物の詳しい検証が絶対必要だ。政府はいま、そのために動いているというので、結果を待ちたい》http://tnishioka.iza.ne.jp/blog/entry/2502157/
(つづく)