駅からの帰路、公園の近くにさしかかると虫の音につつまれる。
眼を閉じると別世界にいるような気になる。すっかり秋だなあ。
ここにきて、野田総理が原発の新設も認める旨の発言をはじめた。
《野田佳彦首相は17日、首相官邸で毎日新聞のインタビューに応じ、原子力発電所の新増設に関し「既に建設が相当進んでいるものもあるので、個々の案件ごとに地元の意向なども踏まえながら判断をしていく」と語り、建設の進捗(しんちょく)状況などによって新増設を認める考えを示した。首相は内閣発足時の記者会見で、原発の新増設は「現実的に困難」としていたが、一部容認する姿勢に転じた》(毎日新聞)
原発事故をめぐる状況がだんだん見えなくなるなか、東京新聞の存在感が突出している。
社説から個々の記事まで、明確な脱原発の方針で貫かれており、すがすがしささえ感じる。他紙の原発推進の論調には、どこか後ろめたいというか奥歯に物のはさまった切れの悪さがあるが、東京新聞はタブーにどんどん切り込んでいくシャープさがある。
先日、こんな記事が載った。
荒川区だけ放射線独自測定せず 区長 東電と“密接”な関係?
(東京新聞「こちら特報部」10月15日)
福島第一原発事故の後、区市町村で独自に学校や公園などの放射線量を測定する動きが広がっている。国や都道府県の対応が不十分なためだ。そんな中、東京23区内では、なぜか荒川区だけが「測定の必要はない」との方針を打ち出している。区民から測定を求める声が噴出しているが、なぜ区は“独自方針”を貫くのか。 (略)
足立、葛飾、江戸川、江東区など、都内でも東部は放射線測定値がやや高めの傾向にある。荒川区の隣、文京区では、小学校の落ち葉で作った堆肥から国の暫定規制値の三倍超のセシウムを検出。同じく隣接する北区では、小学校の敷地内で毎時一マイクロシーベルトを超える放射線量が計測され、除染が実施されることになった。
「地元で細かく計測しなければ、除染もできない」と、荒川区の保護者らは区や区議会に再三働きかけてきた。区内の市民団体は七月、独自測定を求める約四千人分の署名を区長に提出。同区PTA連合会は八月、放射能問題への対応について区長に説明を求める要望書を出した。(略)
荒川区内での測定は、今年六月に都が実施した一斉測定(荒川区は一カ所)、八月の首都大学東京による独自測定(同六カ所)だけだ。六月と九月の定例区議会では、複数の区議が独自測定を求めたが、区側は「測定機器の精度、測定技術、専門的知識の必要性などの見地から、都健康安全研究センターの一括調査と公表が望ましい」と繰り返した。
たとえば、区議会の委員会で総務企画部長の答弁はこうだった。
「マスコミではある意味ヒステリックというぐらいの非常にいろいろな情報が流れた。そうした中、区としては専門性が必要と考える」「風評被害を含めて、安易に私どものような素人が測定すること自体が、案外リスクがある」
「それならば専門家に頼んで計測すればいいだけの話」と憤るのは、「荒川区の子どもの未来を考える会」代表の筑本知子さん(46)。同会が二十三区を調べたところ荒川区以外は保育園や幼稚園、区立小中学校、児童館や公園などを中心に大気や土壌の放射線量を計測。砂場の砂の入れ替えなどの対策をとっていた。
「こちら特報部」の調べでは、定点測定の区が大半だった。定点以外でも「都の測定は区内三カ所だけで説得力がないので、できる限り多数の地点を計測した。今後もやる」と江東区の担当者は話す。
なぜ、荒川区はかたくなに測定しないのか。関係者の多くが「区長の強い意向」という。保守系区議ですら「なぜ区長はそこまで意固地になるのか」といぶかる。
西川区長は都議を四期務めた後、一九九三年に衆院議員に初当選。三期務め、小泉政権時の二〇〇二年に発覚した東京電力のトラブル隠しでは、安全点検で原発が一時全基停止した際、経済産業副大臣として節電対策や原発運転再開に奔走した。〇四年に区長に就任し、現在二期目。
荒川区教委が今年八月、区内の中学生四十人を対象に開いた「今、中学生が立ち上がるとき〜東日本大震災から学ぶ中学生講座〜」の講師の一人には、東京電力上野支社の社員が呼ばれた。テーマは「電力の需給状況について」。(略)
また今月、荒川区の保養施設「清里高原ロッジ・少年自然の家」の指定管理者に、「尾瀬林業」が初めて選ばれた。同社は東電が100%出資するグループ企業。そのため区議会では「なぜこの時期に」と、参入を疑問視する声も出ている。(略)
最後は区長のバックグラウンドにまで触れている。
放射能汚染の調査や除染への取り組みは、自治体によって大きな違いがあることがわかる。
みなさんの住んでいる自治体はどうですか。