福島原発で何が起きているのか5

takase222011-03-25

初春の黄色い花といえば、代表格はミモザだろう。
近所のお宅の庭に、青空を背景に眩しいばかりの黄色の花が咲いていた。冬の白黒の世界から、ぱあっと明るく春の到来を告げるのに黄色い花はふさわしい。
いま私たちは、日本の既存の原発をどうするのかという大問題に直面している。
そこで注目されるのが、定期点検中の浜岡原発の3号機の運転再開の是非だ。
中部電力の水野明久社長が24日、県庁に川勝平太知事を訪ね、定期点検を終えた浜岡原子力発電所3号機を、1週間程度の安全対策訓練の後、起動させたい考えを伝えた。東日本大震災の影響による厳しい電力事情を踏まえ、川勝知事は、万全の安全対策と情報開示を条件に起動を認める考えを示した。(略)
 「計画停電もあり非常事態。管内の安定供給や東京電力管内への応援を考えると、しっかりとした安全対策をとった上、(3号機を起動して)安定供給に努めたい」とした水野社長に対し、川勝知事は「私も同じ考え」と理解を示した。
 一方で川勝知事は、福島での事故後、東電の情報提供が混乱したことに触れ、「あってはならないこと。不安が増幅されて風評被害につながりかねない」と中電側に迅速な情報提供を求めた。
 会談では、6号機の新設や4号機で予定されているプルサーマル計画については触れられなかった。終了後、水野社長は記者団に対し、6号機については、着工を2015年度から16年度に延期するが、現時点では計画を中止する考えがないとし、プルサーマル計画については導入時期は検討するとした》(朝日新聞
知事はGOサインを出したが、大きな反発も予想される。
《中電の方針に対し、浜岡原発の地元自治体からは厳しい声が相次いだ。
 同県牧之原市の西原茂樹市長は24日、読売新聞の取材に「(運転を再開しないと)エネルギーが逼迫する事情は理解できる」としながらも、「(中部電力津波対策として示した)防波壁ができていない現状で、想定を超える津波が来たらどうするのか。津波対策に不安が残るなかでは、できれば原発を止めてほしい」と語った。
 同県菊川市太田順一市長も「今の段階で運転再開を認めるわけにはいかない。『原発は安心、安全だ』と言っていたのが根底から覆り、住民の不安は大きい。中電は津波対策などをきっちりと説明すべきだ。今は運転を止めてくれたらいいと思っている」と述べた。
 同県掛川市の松井三郎市長は「津波であれだけの被害があり、市民から『浜岡原発は大丈夫か』という声が出ている。中電の津波対策については具体的な説明を受けていない。市民感情からも、運転再開を認めるとは簡単には言えない。中電には津波対策の方針をしっかりと示してもらいたい」と強調。同県御前崎市の石原茂雄市長は「現段階では、近く行われる外部電源接続などの訓練を現地で見て確認し、詳しい説明を聞いてから判断したい」と語った》(読売新聞)
川勝平太(かわかつへいた)静岡県知事は、しかし、原発を推進しようとの姿勢ではない。
きのうの朝日新聞のオピニオン欄に、川勝知事の「原発依存からかじを切れ」が載っている。
ここで川勝氏は、3号機は「人助けのためあえて動かす」と言っている。
《「人間は自然を制御しきれるものではない」と私は考えています。地震、噴火、台風、津波などを経験してきた日本人の哲学でもあると思います。
日本政府と電力会社は、二酸化炭素を出さないクリーンな電力源だということで、原発を推進してきました。しかし、原発の安全性が大きく揺らいだ今、エネルギー政策を根本的に見直し、原子力依存から脱却する方向に舵を切らなくてはなりません。
浜岡原発では、6号機の新設や、4号機のプルサーマル計画がありますが、現状のまま進めるわけにはいかないと思います。
ただ、対策は長期的、短期的に考えるべきでしょう。
長期的には、代替エネルギー、特に太陽光発電を増やしていくべきです。(略)
一方、短期的にはどうするか。喫緊の課題は電力不足を補うことです。福島第一原発廃炉を免れない。ほかにも地震で運転停止に追い込まれた原発や火力発電所があり、電力の供給力は2千万キロワット近くも低下しました。
それゆえ、現在運転中のすべての原発を止めることなど到底できません。停電をきたすからです。浜岡原発では、出力110万キロワットの3号機が定期点検を終え、いつでも運転再開できる状況です。震災前の指針に基づく点検ですが、人助けのためにあえて動かすことも考えられます。いきなり原発廃止のハードランディングではなく、電力の供給力を落とさないように徐々に廃止していくソフトランディングが望ましい》
このあたりの考え方が、今後、日本国民の大きな合意点になっていくのではないか。
ところで、はじめの朝日の記事に、川勝知事が東電の情報提供のあり方を批判しているとあるが、オピニオンの中に興味深いことが書いてある。
《一番知りたかったのは、福島原発の揺れの数値です。(浜岡原発の)揺れの許容度は800ガルで、実際には1千ガルまで耐えられます。09年8月11日の駿河湾地震では、浜岡原発の5号機だけが426ガルと他号機の倍以上も揺れました。(略)
ところが、保安院も東電も、揺れのデータをほとんど出さない。福島第一原発3号機は507ガル、6号機は431ガルという以外明らかにされていません。1号機、2号機、4号機、5号機の数値がなぜ公表されないのか。保安院も東電も、ともに情報の出し方がもどかしい》
さすがに原発が立地する県の知事は、関心の持ち方が実践的である。東電は、こうした切実に求められている大事な情報を出さなかったと知事は批判するのである。
ところで、きょう、こんなニュースがあった。
原子力安全・保安院は、25日午前10時半ごろから記者会見し、24日、作業員3人が被ばくした3号機のタービンがある建物で、運転中の原子炉の水のおよそ1万倍の濃度の放射性物質が検出されたことについて、原子力安全・保安院は、「3号機では一定の閉じ込め機能はあるようだが、原子炉のどこかが損傷している可能性が十分にある」と述べて、『放射性物質を閉じ込める機能』が低下し、原子炉から放射性物質が外に漏れ出しているという見方を示しました。一方、東京電力福島事務所によりますと、福島第一原発の1号機では、原子炉の表面で計った温度が、一時、設計段階で想定されていた最高温度の302度を超えておよそ400度に達していましたが、25日午前6時現在では204.5度まで下がったほか、原子炉が入っている格納容器の圧力も、24日午前5時現在でおよそ3.85気圧だったのが、25日午前6時現在でおよそ3.10気圧になっています》(NHK)
とても重要な情報ではないですか。原子炉に何が起きているのか、知りたいのに、これまでほとんど情報が出てこなかった。
「損傷」とか「閉じ込める機能が低下」とか言ってるが、これって、核燃料が溶融(メルトダウン)したうえ、非常に高濃度の放射性物質が漏れ続けているという意味だろう。
やはり、想像していたように、深刻な事態が起きているのだ。