神社で止まる津波7-石橋克彦氏の警告

地震学者の石橋克彦氏は、1997年に「原発震災」という概念を打ち出した。
原発震災」とは「地震による原発放射能災害と通常の震災とが複合・増幅しあう破局的災害」であり、今回の大震災を予言するものだった。
石橋氏は、震災後の政府の対応を厳しく批判する。
まず、事故を起こした福島第一原発の原子炉は、地振動では無事だったが、「想定外」の大津波のせいで全電源喪失に至ったとされていることだ。
保安院は、原発事故のあと、3月末に電力会社に緊急安全対策を指示したが、その内容は大津波で全電源喪失が起きた場合に備えて電源車や可搬式ポンプを配備するなどの津波対策だった。
津波だけに注意を向けるのは大問題だと石橋氏はいう。
いま、原発事故の恐ろしい実態が明らかになりつつある。
はじめ東電が出さなかった事故直後の情報が少しづつ出てくると、津波が来る前に、すでに地震動でかなりの損傷があった可能性が高くなってきた。
「本震の地震動によって1号機では配管破損などによる冷却材喪失事故が、2号機では圧力抑制室の破損による水素と放射性物質の漏出が発生した可能性が高い。つまり、地震動そのものによって『冷やす』『閉じ込める』機能を失うという重大事故がおきた疑いが強い」。
そもそもの耐震基準自体が問題だったというわけだ。
「耐震設計審査基準」は1981年に決定されたが、それが2006年に大幅改訂されて「新指針」と呼ばれるものになった。実は、津波は新指針ではじめて考慮対象になっている。新指針とそれに基づいて電力会社に指示された耐震バックチェックで安全性が高まると政府もマスコミも説明したが、指針改訂の委員だった石橋氏は、委員を辞任している。
既存原発が不適格にならないように、基準地震動が過小評価できるような仕掛けになっていたからだという。新指針自体が非常に不十分だったというのだ。
石橋氏によれば、今回の地震動は福島第一の基準地震動の最大加速度600ガルを超えた可能性が高い。
今の、基準地震動は、柏崎刈羽が2300ガルで突出しているほかは、ほとんど600ガル以下で、低いのでは、東北電力東通の450ガルもある。地震動の想定が甘すぎるという。
ところが、柏崎刈羽では、2007年に1699ガルの地震を経験している。
日本列島が、地震活動の活発な時期に入ったいま、津波対策をすれば安心などといっている場合ではないと石橋氏は警告する。
今回の番組では、神社と津波というテーマだったため、原発津波の想定が甘かったのではないかと問題提起したのだが、より本質的には、地震動への想定が問題だという石橋氏の主張を紹介した。説得力ある警告で、あらためて現状に恐怖を感じた。
石橋氏の意見については「石橋克彦 私の考え」http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/2011touhoku.htmlを参照してください。
(つづく)