テレビに流れた常岡浩介さんの近影

takase222010-08-19

ちょっと調子が悪く午前中、医者に行って、昼過ぎオフィスに着くと、あるテレビ局から、「テレ朝が昼ニュースで、常岡さんの映像を流したが、事情を知っているか」と電話があった。
驚いてネットで検索するとたしかに常岡さんだ。(写真は今回の映像ではない)
「133日この状態が続いている」と語っている。行方不明になったのが4月1日だから、撮影されたのは先週ということになる。
ネットの動画を観ると常岡さんは日本語でこう言っている。
「私の名前は常岡浩介です。この1カ月くらいは大体食事はパンとお茶くらいで、十数日に1回、頭を洗えるというような状態で、かなりひどい状態が続いています」。
痩せてやつれており、だいぶ疲れた表情で心配になった。
私が犯人グループに非常に近い筋から独自に聞いた話では、居場所は転々と移されながら、時には多少「ましなもの」も食べさせられていたという。だが最近は待遇がよくないようだ。
「病気や怪我はしていないが、くたびれた」と常岡さんは語る。
テレ朝は、現地のジャーナリストからこの映像を入手したとしている。
昼ニュースの後、ある筋からテレ朝に「要請」があり、夕方以降はこの映像を出さないことに決めた。しばらくすると、ネットで見れた動画と記事もテレ朝は削除した。結局、昼ニュースだけのスクープになった。
報道の世界では、誘拐など人命にかかわる事件では交渉に関わる重要な情報は伏せることになっている。犯人グループに利用されるのを恐れたのだろうと推測する。
テレ朝の報道を前提に、最低限の事情を解説するとこうなる。
犯人グループは、タリバンの一部だが、タリバンは一枚岩ではなく、ある地方組織である。彼らは常岡さん釈放の条件に、捕まっている仲間との交換を求めたが、うまくいかない。そこで身代金交渉に切り替えたもようだ。
一時期、8月11日にはじまるイスラム断食月ラマダン」入りを期に釈放されるという噂がアフガンのジャーナリストに流れたが、それは実現しなかった。
交渉が進まないなか犯人グループが、メディアも使ってさぐりを入れてきた一つが、今回の映像だったと私は解釈している。犯人たちはいらだっており、打開を求めて、さまざまなルートに「ボール」を投げている。向こうは「煮詰まって」きており、うまくやれば一気に解決できる可能性もあると思う。
実は今回テレ朝が入手した映像には、TVニュースに流れなかった常岡さんの言葉がある。それは「犯人グループの要求にはけっして応じないように」だった。
長い期間幽閉され、疲労困憊しながら、こんなメッセージを伝えてくる常岡さんは、本当の「サムライ」である。頭が下がる。
日本政府には、一日も早い解決のため、いっそうの努力をしてほしい。