ホームレスの歌人

あなたは犬派か猫派か?
こんな問い方を他のことでもやってみる。いろいろある中で、相関がありそうだと思っているのが《将棋vs囲碁》と《俳句vs短歌》だ。私自身は将棋と俳句が好きである。そして、「何となく」(これ、麻生総理が頻発するので、使いにくくなったが)囲碁の好きな人は短歌派のような気がするのだ。《将棋=俳句》派が情緒的で庶民的、淡白な感じなのに対し、《囲碁=短歌》派はハイソで濃厚、論理的。こんな感じがするが、どうだろうか。
私が毎週月曜の『朝日俳壇・歌壇』を楽しみしている話は以前書いた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20081013/
その朝日歌壇に「事件」が起きていた。きょう16日(月)の朝日朝刊に「ホームレス歌人さん連絡求ム」という記事が載っている。
去年暮れから、朝日歌壇に毎週のように連続入選している人がいる。「ホームレス 公田耕一」と名乗る歌人だ。入選謝礼も、読者からの励ましのお便りも届けられないので、記事は「何とか連絡が取れませんか」と呼びかけている。
きょうの歌壇でも入選している。
悲しきは寿町と言ふ地名 長者町さへ隣にはあり
これまでの公田さんの短歌を紹介してみる。
去年12月8日
(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ
12月22日
鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか
今年1月5日
パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる
1月19日
日産をリストラになり流れ来たるブラジル人と隣りて眠る
1月26日
親不孝通りと言へど親もなく親にもなれずただ立ち尽くす
記事には他に選外3首が紹介されていたが、どれも味わい深い。
ホームレス襲撃事件と派遣村並ぶ紙面に缶珈琲(コーヒー)零(こぼ)す
美しき星座の下眠りゆくグレコの唄を聴くは幻
百均の「赤いきつね」と迷いつつ月曜だけ買ふ朝日新聞

きょうの朝日を読んで名乗りを上げるだろうか。
ただものじゃない感じがあるが、いったいどんな人なのか。どんな人生を送ってきたのだろうか。知りたい。とても知りたい。
この好奇心は、人間とは何かという関心に他ならない。そしてこれは、ドラマ、小説、ドキュメンタリーいずれにもつながっていると思う。