「赤旗」が金融危機を斬る

アメリカの金融危機が世界中で激しい株価の下落を招き、世界恐慌の不安が募っている。
マスコミに出てくるエコノミストや政治家が、アメリカやヨーロッパの政府が公的資金を投入せよ、金利を下げよ、と声をあげる。だが、知りたいのは、そんな「とりあえず」混乱をおさめる手当てではなくて「そもそも」何がこの事態を招いたかだ。
小手先の話より、根本を知りたいのだ。
きょうの「赤旗」に載っていた「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫(やんべゆきお)氏の解説はこう喝破する。
金融危機の背景には、世界的な「カネ余り」があります。もうかる場所を探して、カネが動き回る。マネーの暴走です》。
70年代にドルと金の関係を断ち切られ、ドルが独り歩きするようになる。80年代には米国の経常収支の赤字が膨らみ、ドルが世界中にばらまかれ歯止めがかからなくなる。加えて米国は世界に金融の規制緩和を迫って、カネが国境を越えて自由に動き回れる環境をつくる。これが食料や原油の異常な値上げも生み出した。いま、こげついた金融機関が資金調達できないならと、世界各国が金利を下げて資金供給するのは、矛盾の拡大再生産になるという。
傷の浅い日本から欧米の金融機関に多額の資金を出すという話もある。
三菱東京UFJモルガンスタンレーに9500億円、みずほ銀行メリルリンチに1300億円、三井住友が英国のバークレイズに1000億円出資する。日本の大銀行はもうかっているらしい。
これを伝える「赤旗」(5日)の記事のリードはこうだ。
バブル経済に踊り、バブルがはじけるや、国民の税金・公的資金で救済された日本の大銀行。今では大もうけをあげながら、まともに税金を払っていません。貸し渋りや店舗閉鎖などサービス低下には目を向けず、経営危機に陥った外国の金融機関には巨額の出資―いったいどうなっているのでしょうか》
日本の大銀行13行の去年の申告所得の合計は2兆9200億円。普通に法人税40%の計算でいくと1兆1600億円になるはずなのに、納税額は合計1169億円のみ。税金の負担率はわずか4%だ。これは、赤字を翌年以降に繰り越して利益と相殺できる、欠損金の繰越控除制度があるからだ。繰越期間は5年間だったのが、政府が04年に制度を改め、7年間に延長、01年度の赤字分まで遡って適応できることになった。つまり、いま大もうけしていても7年前に赤字が出ていればこの制度が使える。「節税」効果はすさまじい。
《大銀行が税金を払わずためこんだお金は、国内ではなく海外に向けられています》
シンプルにして遠慮のないストレートな解説。言っていることは正論である。庶民目線がぶれないから迫力がある。
混迷の時代、「赤旗」がおもしろい。