オリンピックに殺される!

 オリンピックに殺される!!

 まさか!と思うだろうが、これが実際の話で、コロナ感染爆発のインドネシアから逃れようとする邦人が、オリンピック対策のために帰国できないでいるという。

 いまインドネシアでは、医療体制が完全にパンクして、コロナに感染しても医療機関にはかかれない。13日までに在留邦人14人が亡くなったと報じられている。

 ある日系企業は下請けをふくめ従業員の4分の1が感染。「病院にかかれないので、コロナになったら最後。長くいるほど感染リスクが高いため、なるべく早く(邦人スタッフと家族を)帰したい」という。

 国民の生命を守るというのが国の最大の責務ではないのか。
 念仏のように「国民の命と健康を守る」と繰り返す菅首相、あれは戯言だったか。

f:id:takase22:20210718093844j:plain

7月17日朝日新聞2面

 尊敬する探検家の岡村隆さんがFBに怒りの投稿。以下

https://www.facebook.com/takashi.okamura.944

《◎帰りたくても帰れぬ「祖国」、五輪に「殺される」邦人

 あまりエモーショナルな言葉で煽りたくはない。だが、これはどう考えてもそういうことではないか。コロナ禍が苛烈を極め、邦人の死者も相次いでいるインドネシアから「生きて日本に帰りたい」と願っても、乗れる航空便はなく、祖国も入国者 (帰国者) を制限していて帰れない。入国 (帰国) 制限の大きな理由は感染者流入防止の「水際対策」のためだというが、具体的に大きいのは、入国者 (帰国者) が10日間宿泊する首都圏の「待機施設」が、とくに今は「五輪関係の入国者」に占拠されているからだという。

 その入国制限が (財界筋からの働きかけがあったためか)、特別に緩んで民間主導のチャーター便がインドネシアに飛ぶようにはなったが、まず乗れるのは、会社などが自前で「待機施設」を用意できる大企業の駐在員などごく一部。これだと中小企業や個人営業のビジネスマン、あるいはNGONPOで活動する人、大学などの正職員ではない研究者、留学生、フリージャーナリスト、その他、さまざまな理由で現地に暮らし活動する個人在留者は、後回しか、最後まで帰国便に乗れないことになる。現実に最初のチャーター便は、座席はあっても、一社のごく少数の人数で帰ってきた。現地では、大使館や在留邦人会はじめ、心ある多くの人が、合理的な、より多数での帰国を模索していることだろうが、その思いは日本政府の中枢には届かない。

 いったい、これはどういう国なのか。政府はこの事態になってようやく中部空港などに帰国者を移し、地方に「待機施設」を確保する方針を打ち出したようだが、その程度のことを、なぜもっと早く思いつかないのか。いや、その前に、なぜ邦人救出 (政府の義務) が「民間主導」となったのか、なぜ首都圏の待機施設がオリンピック関係者優先になったのか。なぜ帰国者に優先順位がつくような、不平等でぶざまな形の「邦人保護」になったのか……。

 いのちを守る緊急避難の帰国さえままならない祖国、それも、物理的理由より政府の無策や、誤った選択、施策が大きな理由で帰れない祖国が「五輪開催の輝かしい国ニッポン」だ。このままでは五輪に浮かれる人もいる一方で、「五輪に殺される」と感じながら、いつ帰れるかを案じている人がいても不思議ではない。後者の思いは、組織に属さず個人で外国に長期滞在することもある人や、そんな人を家族に持つ人々にとっては、実感的に理解できる感覚ではないだろうか。

 コロナに罹患していてもいなくても、オリンピックがあろうがなかろうが、「生きて日本に帰りたい」と願う人が、一人残らず、一日でも早く帰国でき、治療を受けたり安心を得られることを切に願うが、それにしてもまあ、現実はなんと残酷でぶざまなことだろう。『美しい国へ』「自信と誇りの持てる日本へ」 (安倍晋三の著書名と惹句) などという立派な言葉に誘導されて、『政治家の覚悟』(菅義偉の著書名) の強さのもとに動いてきたニッポン国の「現実の姿かたち」がこれなのだ。その空しさを改めて思い起こしながら、この夏がどうなっていくのかを見つめていこう。オリンピックの狂騒に惑わされずに、隠されがちなニュースに注目しよう。》

 

 どこがどう劣化しているのか分からないくらい、この国がおかしくなっているように思われるきょうこの頃。

とめどなく崩落続ける日本国 (奈良県 横井正弘 朝日川柳6月30日)