フォトジャーナリストの安田奈津紀さんの写真展「The Voice of Life 死と、生と」を観にオリンパスギャラリー東京に出かけた。きょうは、タレントのサヘル・ローズさんをゲストにギャラリートークがあった。
会場には安田さんのいくつものフィールドから、死と生にまつわる写真が展示され、見ごたえがあった。安田奈津紀といえば、日曜朝のTBSの情報番組「サンデーモーニング」のコメンテーターとして知られている、若手フォトジャーナリストの代表格だ。早くから海外での取材が注目され、2012年に25歳の若さで「HIVと共に生まれる -ウガンダのエイズ孤児たち-」で名取洋之助写真賞を受賞している。世界各地の紛争地や3.11の被災地のほか、末期がんの人の死のドキュメントなど多くのフィールドで活躍する、すごい人である。
これはイラクで「イスラム国」が絶滅をはかったヤジディ教徒の避難民の子どもたち。どんなに厳しい環境でも子どもの笑顔で風景もぱあっと明るくなる。
東京のある夫婦が死別する瞬間。二人は初めて会ったときの服を着て最期を迎えたという。後日、写真展に二人の最後の日々を展示したさい、夫がやってきて「ぼくは写真を観に来たのではなく、彼女に会いにきたんです」と言ったそうだ。写真の力、存在意義を考えさせるエピソードだ。
ギャラリートークは大盛況で、会場からあふれた人たちにパブリックビューイングスペースも用意された。
安田さんとサヘルさんはほぼ同年、たがいに「なっちゃん」「さっちゃん」と呼び合う親友だ。安田さんの話はいつもながら聞かせたが、サヘルさんがまたすばらしかった。
私は9年前からサヘルさんのファンで、このブログで何度も紹介してきたが、きょうのような彼女のトークをじっくり聴くのは初めてだ。
イラン・イラク戦争によって3歳で孤児になったサヘルさんがいかに苛酷な運命をたどったかは、私の過去のブログに書いた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090609
8歳で養母と日本へ。ホームレス生活も経験し、中学ではひどいいじめにもあって中3で自殺しようと思った。ところが、養母をハグした瞬間、自分のために苦労して衰えた体を感じ、「この母のために生きよう」という思いがこみあげた。誰かのために生きるという思いからエネルギーがわいてくる。自分は演劇やエンターテインメントなど表現する仕事をしているが、母からも「誰のために表現の仕事をするのかの原点」を忘れるなと言われている。
親戚のいない私には養母しかいない。養母が死んだら自分は「ゼロ」になるのだろうか。いや、私は次の世代に思いをはせたい。日本には4万6千人の家族のない子どもたちが「施設」にいる。私の「夢」は、「サヘルの家」をつくること。それは「施設」ではなくて「家」。「生まれてきてよかった」と思う子どもを一人でも増やしたい。
サヘルさんが、「日本の報道にシリア問題の少ないことに驚きます」と話題をシリア問題に振って、「私たちにいったい何ができるのか」も語られた。
安田さんはあるイラク人の言葉に勇気づけられたという。人間というのは戦争をやめない、そんなもんだよ、となげてはいけない。「あきらめる心」が戦争を続けさせる。人の手で起こされたものなら、人の手でとめられるはずだ。
サヘルさん。今、私たちに何ができるか。一人ひとりが考えを発言し、アクションを起こしていく、発信していくことが大事だと思う。君は音楽だけ、君はタレントだけやっていればいい、というのではなく、一人の人間として(政治もふくめ)自由に発言していきたい。
すると安田さんが、日曜のテレビ番組のスタジオでコメントしているが、写真家がどうしてあんなことを言うのかと言われる、でも、(自主規制せずに)自由に言葉を発する空間を作っていかなくては、とフォローする。
サヘルさんが子どものころのつらい体験を語って涙を流すと、安田さんがすっと手を伸ばしてサヘルさんの手を握る。ときどき互いにちゃちゃを入れて、会場をわかせる。仲良し同士の、ぴったり息の合う、笑いあり涙ありの内容が濃いトークになった。
サヘルさんは会場に向かってこう言った。ここ東京はほんとうに平和ですよ。みなさんには明日という日があるでしょう。食べるものも、服も靴もあるでしょう。でも、この生活ってあたりまえじゃないんです。地球の裏側ではそうなっていない。日本がどれほど平和なのか、子どもたちに知ってもらいたい。
実際の二人の言葉は、私の紹介よりはるかに豊かな表現であったことをおことわりしておきたい。たった1時間のトークだったが、聞き終わって心に栄養をもらった気分になった。
安田さん31歳、サヘルさん32歳。若くしてすばらしい信念と才能をもつ二人のこれからが楽しみだ。元気で活躍してほしい。
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一方、夜のニュースをみると、日本の政治家どものていたらくにあきれる。
財務省の福田淳一事務次官によるセクハラ疑惑に対する麻生太郎財務相の反応。連日の「自爆」ともいえるコメントと物言いは、まさにミゾウユウ。まさか、安倍政権をつぶすためにわざとやっているんじゃないよね・・・