外来種は悪者なのか?2

 台風が去って豪雨が来る珍事(福岡県 石井温風) 7日の朝日川柳より 

 九州は豪雨で、北海道は猛暑と異常な天気のニュースが続いている。
 東京はこのところ晴れた真夏日で、会社の前の小川町交差点の風鈴が涼を奏でている。
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 斎藤美奈子氏がいつもの「本音のコラム」(東京新聞12日朝刊)で笑わせてくれた。
 題は「もしも首相が・・・」。
 《政治家の口まねをする芸人さんが昔はよくいましたよね。田中角栄首相や大平正芳首相の。ああいうの、近頃ははやらないんですかね。
 『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(神田桂一&菊池良・宝島社)は文体模写を楽しむ本で、「きみが焼きそばを作ろうとしている事実について、僕は何も興味を持っていない」(村上春樹風)とか、「カップ焼きそばに現在性があるとすれば、その変成のイメージにある」(吉本隆明風)とかいう文章が次々出てくるのだけれど、たとえばこれが現首相なら・・・。
 「いわゆるカップ焼きそばの、作り方につきましてはですね、これはもう、まさにこれは、そういう局面になれば、お湯を注ぐわけであります。それをですね、それを何かわたくしが、まるでかやくを入れていないというようなですね、イメージ操作をなさる。いいですか、みなさん、こんな焼きそばに負けるわけにはいかないんですよ」
 そして官房長官は・・・。記者「もしも総理がカップ焼きそばを作ったらという点について伺いたいのですが」。菅「仮定の質問にはお答えできません」。記者「総理は焼きそばに負けないといっています」。菅「まったく問題ありません」。記者「ですが、焼きそばは食べ物です」。菅「その指摘は当たりません」。
 誰かコントにしてくれません?》
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 前回のつづき。『外来種のウソ、ホントを科学する』(築地書館)より。
 ラクダはどこのものか。これを確定するのは困難だ。あらゆる生物が絶えず移動し進化する。
 「何かが今、たまたまある場所にいることが、あたかも特別な必然であるかのように決めつけようとはしない世界観を採ったなら、それが何であれ、どこに属するのかという問いに明快な答えは出てきようがなくなるのである」
 人類だって、アフリカから発して、ナイル運河あたりをわたってユーラシア大陸に進出、そこから大陸を横断してベーリング地峡を越え、アメリカ大陸にいたり、南米の南端ホーン岬まで達したわけで、それぞれの土地にとっては外来種。そして人間は生物種をまき散らす最大の要因でもあり、農作物や家畜など、圧倒的多数の生物は人間に役立っている。在来種がよいもので外来種が悪者ということは言えない。
 著者のケン・トムソンは、「害を及ぼす可能性がある種の侵入を防ごうとする努力」をやめろと言っているわけではない。ただ「外来種が生態系や他の生物の存続を脅かすというのが自明の理のように世界を見る考え方が問題だ」と指摘するのだ。
 「侵入種はたいてい、早い時期に『ブーム』がくるが、やがて低いレベルに落ち着いていく。それは、侵入種と、侵入された生態系双方の適応の結果だ。したがって、侵入初期の爆発的拡大に、いたずらに慌てないほうがいい。」
 これはナガミヒナゲシについての岡本よりたか氏の「スパンを人の基準から植物の基準に置き換えた時、植物は、最終的には落とし所を見つけて、ひっそりと佇む事になるのだろう」という指摘に通じる。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20170512
 「おしまいに、今この世界は、人間の活動によって生物圏が完膚なきまでに改変されていて、その中では外来種生物の拡大など、じつはほんのかわいらしい(それにさして重要でもない)ものだ。そんな世界にあるのだから、いまだ汚されていない、人間以前の黄金時代に時計を巻き戻せるなどという考えは、いい加減に捨てたほうがいい。たとえ、その黄金時代のイメージをどんなにありありと描けたとしても。そうではなく、この侵入された見事な新世界を最善の場所にするために、わたしたちにとって何ができるかに集中する時が来ているのだろう。」
 まったく、そのとおりです。