湯川さん、後藤さんの家族にお悔みを言ったのか?

takase222015-02-12

2月6日、ドイツ人記者が後藤健二さんのお母さんに取材に行ったさい、「安倍内閣が現時点まで弔意を示す連絡を母親に入れていない事実に絶句した」そうだ。

殺害予告動画が流れた1月20日の前も後も、後藤さんの母親には政府は連絡すらしていなかった。

調べてみると、湯川さん殺害のあとの首相声明は
御家族の御心痛は、察するに余りあり、言葉もありません。このようなテロ行為は言語道断の許しがたい暴挙であり、強い憤りを覚えます。断固として非難します。」
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/discource/20150125seimei.html

後藤さん殺害の後が、
御親族の御心痛を思えば、言葉もありません。政府として、全力を挙げて対応してまいりました。誠に無念、痛恨の極みであります。非道、卑劣極まりないテロ行為に、強い怒りを覚えます。許しがたい暴挙を、断固、非難します。」

一方、ヨルダン人パイロットの殺害が分かったあとは、
御家族の心境を思うと言葉もない。ここに、日本政府及び日本国民を代表し、衷心より哀悼の誠を捧げ、心からお悔やみを申し上げるこの困難な時に、日本はヨルダンと共にある。ヨルダン政府及び国民の皆様に対し、心からの連帯を表する。」

アメリカ人ケーラ・ミューラーさんの死亡が確認されると。
ここに、日本政府及び日本国民を代表し、衷心より哀悼の意を表するとともに、ミュラー氏のご家族に対し、心からのお悔やみを申し上げる
この困難な時にあって、米国政府及び米国国民の皆様に対し、揺るぎない連帯を表明する。」

日本人二人のときには、「お悔み」がないではないか。

自民党谷垣禎一幹事長は6日、イスラム過激派組織「イスラム国」に殺害されたとみられるヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉の弔問のため、東京都内のヨルダン大使館を訪れた。」
ちゃんと弔問をしている。
ところが、湯川さん、後藤さんの家族には政府のしかるべき立場の人が弔問したという話を聞かない。
いったいどういうことなのか。

自国民がやられると「自己責任」で、外国人だと尊い犠牲になるのか。
湯川さん、後藤さんの死をそれだけ軽く扱っているのに、「イスラム国」に対しては二人の敵討ちをしてやるとばかりの強い感情的メッセージを発するのはなぜ?

どこから突っ込んでいいかわからないほどの政府のムチャクチャぶりだが、きょう、旅券を返納させられたカメラマンの杉本祐一氏が外国人特派員協会で会見を開いた。(写真はhttps://twitter.com/katokenjiroより)

興味深かったのは、特派員たちのコメント。

イタリアでは返納はありえません。基本的には憲法の下、刑事事件で確定判決が出ていない限り、また、医学的に正常な判断ができないという限り、どの市民にもパスポートを持つ権利がある。(イタリア人記者)

もしこのようなことが英国で起これば、大きな論争が起こると思う。日本の皆様の話を聞いてると、多くの方は社会や政府にあまり迷惑をかけてはいけないので、外務省は正しい判断をしたのではないか、という雰囲気を感じる。(英国人記者)

フランスでも、ISILに属して仕事をするなどしていたらもちろん取り上げられるかもしれないが、そうでなければ取り上げられるということはない。
私の理解する限り、日本人とパスポートの関係は、他の国とはちょっと違う気がする。つまり欧米では市民の権利だが、日本では、"政府が与えてあげる"という感覚があるのではないかという感じがする。(フランス人記者)

今回は、将来、さまざまに国民に規制をかけるための「前例」づくりだったのだろう。
返納命令をどこまで押し返せるか、これから何をしかけてくるのか、注視しなければ。
しかし、大変な世の中になってきたものだ。今の空気がこわい。