奄美からTPP反対の声

takase222014-12-22

16日から20日まで、喜界島(きかいじま)に出張していた。
島の名前は聞いたことがあるが、どこにあるのか知らなかった。地図で見ると奄美大島の隣である。
《隆起性サンゴ礁の島で全島ほとんどがサンゴを起源とする石灰岩で出来ている。約12万年前に島として現れたと見られ、現在も年間約2mm隆起を続けている。・・ハブは生息していない。》などとネットで予習して行った。

まさに離島である。
30人乗りの双発プロペラ機「サーブ」は、天候が荒れるとすぐに欠航になるという。先週は、「爆弾低気圧」の影響で日本各地は風雨や豪雪の被害があったが、そのため、行きも帰りも、鹿児島と結ぶ空便が飛ぶかどうか、はらはらしていた。
低気圧のせいで寒かった。南の島だからTシャツでOKかと思っていたが毎日ヤッケを着込んでいた。

写真は夕陽が美しいというスギラビーチ。この撮影のときだけ1時間ほど陽がさした。
島民は7500人弱。人口減のスピードははやく、九つあった島の小学校は統合されて二校になったという。
高台から眺めると、島全体にサトウキビ畑が広がり、これが主産業になっている。お土産屋さんに並ぶのは、黒砂糖、ザラメ、黒糖焼酎、サトウキビ酢とサトウキビ産品ばかりだ。
島の人は、「ここの黒砂糖は奄美大島や沖縄のものよりずっと美味しい」と言う。私も黒砂糖や黒糖焼酎を土産に買った。

いま島の人たちがとても心配していることがあるという。タクシーの運転手さんが、教えてくれた。
「サトウキビは1トン2万円の収入になるけど、これでトントン。でも、そのうち1万6千円が補助金です。TPPでサトウキビを作る人はいなくなる。そしたら、島はおしまいですよ。私らみなTPPは絶対反対です」
TPPでは、関税も補助金の元になる調整金も原則なくすことになっているのだ。
黒糖だったら味の違いもあるのだろうが、白砂糖になってしまえば、喜界島産だろうがフィリピン産だろうが区別がつかない。市場をオープンにしたら壊滅するのは確実だ。
甘味資源作物は、TPP交渉で日本が関税撤廃の例外化を目指す「重要5項目」の一つに入っているのだが、どうなるかわからない。
そもそもTPP絶対反対を公約していた自民党が、政権を獲ったら手のひらをかえすように交渉推進にまい進しているではないか。

喜界島をふくむ奄美群島がサトウキビを特産にするようになったのには歴史的背景があるという。
江戸時代、薩摩藩は、支配下にあった奄美にサトウキビを植えさせ、できた砂糖の全量を藩が買い上げた。「砂糖地獄」といわれるほどの重労働で島民は苦労したという。
戦後、奄美は沖縄とともにアメリカの軍政下に置かれる。島民は日本復帰運動を展開し、戦後8年たった1953年に日本に戻った。
復帰後、政府はサトウキビ栽培を奨励。1970年にコメの減反政策が始まると、水田をサトウキビ畑に転換することが奨励されたという。
台風直撃ルートにあたる奄美では、台風や干ばつに強いサトウキビは自然に適した作物でもあるのだが、モノカルチャーに近いから、TPPでこれが壊滅したら、奄美全体の経済は目も当てられない惨状になるだろう。
喜界島の運転手さんとTPP反対を誓い合った。