「わからないから怖い」のは人情だが

takase222013-08-26

朝、駅前で上を見たら、秋みたいな雲が。
まだ暑さは続くが、確実に季節は移っていく。夜は虫の音が聞える。
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ご無沙汰だった「朝日歌壇」。
小6の松田わこ、獄中歌人の郷隼人、不思議流の上田結香ら常連は入選していたが、きょうはパス。
歳なのか、こんな歌が目に留まった。

点滴が長く続きし夫なれば霊前の飯大盛りにする
             (飯田市)草田礼子

同世代で鬼籍に入る人が増えてきた。先月も昔の友人のK君が亡くなった。高校の応援団長で体は頑丈なやつだったが・・
ちょっと気になる歌が。

中年となりて未来を見失う 未来のために生きてた少女
             (大洲市)村上明美
身につまされる。若い頃は明るく前を向いて歩いてきたが、社会に出て経験を積み、挫折もし、いろんなことも知るなかで、迷っているということなのか。かつての自分をみるようで、励ましてあげたくなる。
この人は、4月22日の歌壇でこんな歌を詠んでいた。

同僚は白いベールの向こう側 退職決めて景色は歪む
たぶん30歳代。いま、人生の岐路と感じて悩んでいるのだろう。がんばれ。

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チェルノブイリ事故の後、旧ソ連圏では平均寿命が大幅に低下する。
これは事故のせいではなく、共産主義の崩壊という社会変動のためだった。ロシア、ウクライナベラルーシなど原発事故の主要な被災地だけでなく、他の旧ソ連圏でも同じ傾向が見られた。
《1991 年末のソ連の崩壊、それにともなう社会的・経済的混乱が人々の健康にも大きく影響し、ロシア人男性の平均寿命は、1990 年に 63.8歳だったものが 1994 年には 57.7歳まで下がるというほどの異常事態であった》(今中前掲サイト)
社会・経済的要因による健康への影響があまりに大きかったことも、被曝による影響を見極めにくくした。
チェルノブイリ事故の被曝による健康被害は、福島が先例として学びうる唯一のものだが、これがよくわかっていない。
福島の事故で、我々は「よくわからない事態」に突入したのだから、まず、直後からしっかりした検査・調査体制をつくるべきだった。特に子どもたちの被曝量の測定、追跡調査、万が一のための補償制度を作って、少しでも不安を減じる措置をとるべきだったのに、これがやられていない。
こうした基本的なシステムの不備が、不安を大きくする土壌を提供したことは確かである。
とはいえ、ネットでもマスメディアでも、危険だ危険だと騒ぎ、不安を煽る言説が多く出回っていることも問題だ。
「よくわからないから怖い」というのは人間の心理として当然ではあるが、しかし、そこからさらに不安が煽られて、何が何でもゼロでなければ、わからないものはみんな遠ざけよう、ということになると、風評被害をはじめ大きなダメージを地域に与えてしまう。
極端な場合、事故原発近くの出身者だからという理由で差別されるというところまでいく。
少女たちが将来子どもを産めないのでは、などと絶望してしまうような事態を招いてはならない。
しかし、被曝レベルからいって、本当に大丈夫なのか。
(つづく)