人権弾圧はチベットだけではない

takase222008-03-19

朝の通勤途中、おしゃれした親子何組かを見た。幼稚園の卒園式らしい。すっかり暖かくなってコートはやめた。近所のミモザも満開だ。
ダライ・ラマが暴力が続くなら退位すると語った。
チベット亡命政府の最高指導者ダライ・ラマ14世は18日、当地の私邸で記者会見し、「チベットで暴力が続くなら、わたしは辞任する」と述べ、政治指導者からの退任も辞さない考えを表明した。また、中国チベット自治区で起きた一連の暴動を「ダライ集団による謀略・扇動」と断定した同日の温家宝首相の発言を全面否定、国際社会に事実解明のための調査団をチベットに派遣するよう改めて求めた。
 ダライ・ラマは「状況に歯止めが利かなくなれば、辞任が唯一の選択肢だ」と語った。この発言について側近のタクラ秘書官は時事通信に「チベットの人々に向けられたもので、暴力路線を追求するなら政治指導者を退く以外にないという意味だ」と指摘、チベット仏教ラマ教)教主の位に変わりはないとした。ダライ・ラマは1989年のラサ騒乱の際、同様に辞職の可能性に言及したことがある。
 ダライ・ラマは「われわれ(亡命政府)が(抗議行動、暴動を)抑制することはできない」と主張、中国に弾圧をやめ、対話を通じて問題を解決するよう強く求めた。さらに、チベット独立は「達成し得ない要求であり、現実的ではない」として、高度な自治を求める「中道」政策の堅持を改めて訴えた。亡命チベット人社会では、若者を中心に独立を求める声が出ており、「独立ではなくなぜ自治なのか、若者を説得するつもりだ」と語った。:ダラムサラ(インド北部)18日時事》
 ダライ・ラマは退位を示唆することで、チベット人の暴徒化を食い止めようというのだ。法王は、一貫して非暴力を主張しており、この発言を見ても、彼の指示で今回の「暴動」が起きたのではないことが分かる。
 ただ、抗議行動自体は、オリンピックを睨んで入念に準備されたものに違いない。リチャード・ギアは15日のCNNでしきりに今回の抗議行動が「自然発生的な」(spontaneous)ものだと言っていたが、私は最近、ある人々がラサでの抗議のために以前から動いていたことを知った。またラサだけでなく、各地で同時多発的な動きがあるのは、組織的抵抗勢力が温存されていることを示す。
 根本的な問題は、ダライ・ラマが言う中国による「文化の虐殺」にある。今回、平和的な抗議行動をしようとしたのに暴徒化したのは、中国側の責任だとチベット人たちはいう。
 今夜のTBS「ニュース23」はよかった。VTRでパンチェンラマの後継騒動を含む中国のチベット弾圧史を振り返ったあと、チベット人ペマ・ギャルポ氏がスタジオに呼ばれて今回の事態を解説した。さらに「中国、もう一つの人権問題」と題して、エイズ患者を援助する人権活動家が逮捕されたことを伝えた。北京在住の胡佳さん(34)で、TBSが去年取材した映像を流した。取材班が胡さんの自宅を訪ねたのが去年8月。すぐにアパートで公安に止められチェックを受けている。「国家の安全を脅かした」として、すでに去年5月から自宅軟禁されており、奥さんの曹金燕さん(24)は妊娠中だった。外に出られるのは食料品買出しと治療のみ。毎回尾行がつく。取材中も後ろから公安が車で付いてきていた。
胡さんは以前、突然行方不明になったことがあった。曹さんがブログで世界に発信したことで、胡さんは家に戻ってきたが、公安に拉致監禁されていたという。曹さんは「世界で最も影響力のある100人」に、中国人として胡錦涛らと並んで選ばれた。11月に女児を出産するが、12月には胡さんが逮捕された。「政権を倒そうとした」罪だという。TBSが電話をかけると、盗聴されているような雑音のなか、子どもが日光を浴びることができないことを嘆いていた。
 私が観た日本のテレビ報道のなかでは、中国の人権状況に対する最も鋭い内容だった。この番組は、日本で最初にダライ・ラマを登場させたことで知られる。声援を送りたい。
中国が人権活動家を国家転覆の容疑をかけて弾圧していることは、2月10日の日記(http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080210)でも触れたが、中国当局はかなり民主化の動きにおびえているようだ。中国が磐石の支配体制ではないことを浮かび上がらせる。