能登半島の被災地の復旧が驚くほど遅い。被災者はいまだに多くが学校の体育館などの公共の建物で寝泊まりしている。テレビニュースで見るかぎり、避難所の滞在条件の劣悪さに手が打たれてこなかったように思われる。冷たい体育館の床に直に寝た人も多かったそうだ。この寒い日がつづくなか、である。障害者や病人、赤ちゃんもいるだろう。
レジリエンスがうんぬんという能書きはいいから、まずは緊急避難の適切な場所と態勢の確保につとめてほしい。
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きのうは地元、国分寺市の「憩い広場びいだま」で、私のミニトーク「ウクライナはなぜ戦うのかそしてわが祖国日本」が開かれた。
兵器弾薬・人員すべてに不利なウクライナがなぜ持ちこたえているか、そしてその戦いを日本人が理解できないのかを語った。先月の地平線報告会の別バージョン版。
現在の日本人の多くがもっている世界観・人生観は以下のようなものだと思われる。
・世の中でいちばん大事なのは自分=「私」だ
・人生の目的は「私がしあわせになる」ことにある
・この世はすべて物質=「モノ」でできている
・「心」も脳細胞という「モノ」の産物に過ぎない
・「私」は物質の組み合わせで偶然この世に生まれてきた
・死んだら灰(物質)になってオシマイ
・せいぜい生きてるうちに楽しまなくちゃ
・楽しくなければ人生じゃない
・人生には「絶対の意味」などない
・倫理は時々の人間が勝手に作ったものにすぎない
これでは必然的に人と人、人と自然の関係が歪み、自己肯定感や、自分の所属する集団(家族、地域、学校、会社、国など)の一員であることのアイデンティティ意識も低くなる。この元気になれない考え方を何とかしなければと問題提起。これが好評で意を強くした。今後もコスモロジーの話をしていきたい。
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人柄のすぐれた人に共通するマズローの「自己実現的人間」の特徴つづき。
8.しばしば「神秘体験」や「至高体験」をしていることである。これは後述。
9.「共同社会感情」で、人類に対して「ときどき怒ったり、いら立ったり、いや気がさしたりするにもかかわらず、同一視や同情や愛情をもっている」。
しっかりした自分がありながら、独善的でも隠者的でもない。そして、愛情が家族、身内、仲間だけに限定されていない。深い人類愛を抱いている。
10.「深い対人関係」である。
前回あげた5(「孤独、プライバシーを好み、欠乏や不運に対して超然としている」)と矛盾しているかに見えるが、孤独に耐えられる、孤独が好きな人こそ、ほんとうに深い人間関係がもてる。
11.「民主的性格構造」で、自分を大切にできる人は、ひとも大切にすることができ、自分もひとも人間として平等な価値や権利をもっていることを認められる。
さて、先ほどの8の「至高体験(peak experience)」というのは、仕事がうまくいったときや幼い子どもが初めて歩いたとき、山道を登って開けた絶景を見たときなど、とてもいい気持の「最高」「絶頂=ピーク」の瞬間の恍惚感である。
マズローはこの言葉を作り出すことによって、じつは日常誰もが程度の差はあれ経験している歓喜、恍惚、絶頂感といったものから、自己実現的、創造的、美的経験、洞察経験、さらには非日常的な神秘体験(いわゆる大洋感情や宇宙意識)まで、心理学の重要な研究対象とした。そして、そうした体験が生活の充実さらには人間成長・自己実現に対してもつ重要性をあきらかにした。
(つづく)