ワールドカップが、巨額な放映権料はじめ、大きなビジネスチャンスに結びついていることは、新聞などで断片的には知っていた。
その実態は、私たちの想像をはるかに超える激しい競い合いが行われているようだ。
きのうの新聞記事によれば、あの本田選手のフリーキックの裏にも、スポーツメーカーの開発・営業競争があったという。
《あの靴は何だ――。1次リーグE組のデンマーク戦で、日本の勝利の扉を開いた本田の無回転シュート。右に一度揺れてから、左に逃げながら落ちていった「魔法のキック」を生み出した黄色のシューズが注目されている…》の書き出しは、日経新聞(25日)。
独アディダスや米ナイキに資金力では対抗できないミズノは、本田に協力を要請し、2年がかりで「ボールに回転のかかりにくい素材」を開発し、それをパッドにつけた「無回転シューズ」を生んだという。
今回、あのフリーキックで、本田が履いたミズノの黄色いシューズは、世界的な注目を浴びることに成功したわけである。
もっと大きな視点からワールドカップと経済を見るのは、吉崎達彦さん(双日総合研究所)だ。http://tameike.net/
吉崎さんによれば、世界で300億人がテレビ観戦するお化けイベントになったワールドカップを見ると、グロ−バル経済=先進国という図式が小気味よく崩れているという。
まず、大会の公式スポンサーに大きな交代が生じている。
過去4大会を振り返ると・・・
1.JVCや冨士フィルムなど日本の常連企業が撤退、今年、日本からはソニー一社になった。
2.1998年には日米欧企業がスポンサーを独占していたが、今年はブラジル、韓国、UAE、南アなど半数近くが新興国になった。
3.かつてほぼ半数を占めた米国企業は、今年のスポンサー14社中4社(コカコーラ、バドワイザー、VISA、マクドナルド)とシェアを大きく落としている。
吉崎さんによれば、《サッカーほどグローバル化に成功しているスポーツは他に例を見ない》。選手や監督はボーダーレスで、《どんな貧しい国の子どもでも、サッカー選手として成功すれば冨と名声をゲットできる》。
一方では、きのう書いたような、きわめてナショナルな感情を噴出させるワールドカップだが、サッカー自体は徹底したグローバリズムが貫いているというのである。
ところで、今年のスポンサー一覧で「英利ソーラー」なる会社が目を引いた。中国の発電会社だ。ソーラーパネルを作る会社だが、中国のグリーン・ニューディール関連分野へのてこ入れが並々ならぬものであることを見せ付けている。翻って、日本がこの分野でも立ち遅れはじめる兆しではないかと心配になる。
ワールドカップは、世界の最新の潮流が反映しているように見える。