すたれた傑作「親指シフト」

takase222012-01-11

久しぶりに大学時代の旧友に会った。
早大水島朝穂教授、知る人ぞ知る「護憲派」の大御所だ。
早大の彼の研究室には、各地の戦場の武器や薬きょう、ヘルメット、Tシャツ、紙幣をはじめ30年以上にわたって収集された「歴史グッズ」が所狭しと展示されている。ざっとみて、数千点あるだろう。
これに対抗できるとすれば、北朝鮮グッズ収集でおなじみの、山梨学院大学宮塚利雄教授の研究室しか思いつかない。
まさに一財産。
水島とは大学入学直後からの付き合いだからほぼ40年になる。
大学一年のとき彼の自宅に行った。本棚にレーニン全集がならんでいた。きっと「飾り」だろうと思って、そのうちの一巻をめくってみたら、ちゃんと読んだ形跡があった。世の中にはすごいやつがいるもんだな、と驚いた。
山形の俺のうちにも泊まりに来たことがあったよな、と言うと、間髪おかずに「西宮内(にしみやうち)という無人駅だったな」と答える。おそろしい記憶力だ。
彼の行きつけの店で飲みながら昔話をしていたら、ひょんなことから「親指シフト」の話題になった。
親指シフトというのは、かつて一世を風靡した、かな入力方式で、富士通ワープロで採用された。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%AA%E6%8C%87%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88
私が遅まきながらワープロを使いはじめたのは1990年。すでに使っている人たちに何を買ったらいいかと聞くと、富士通親指シフトを熱心に勧める人が何人もいた。それで私も富士通ワープロを買ったのだ。
特殊な指の動かし方が必要なので、面倒だなと思ったが、思ったより簡単に慣れた。使い始めると、「手ぼっこ」(山形の方言で、不器用なこと)でITオンチの私でも、その優位性ははっきり分かった。
ローマ字入力やJISかな文字入力と比べて、とにかく速い!また打ち間違いが少ない。
先輩がみな勧めるはずだ。文章を書くのがうれしいという感覚をはじめて持った。
こうして、重宝して使っていたら、いつの間にか、ワープロからPCの時代になって、富士通親指シフトから撤退した。
私もあきらめて、ソニーIBMのパソコンで、ローマ字入力で文章を書くようになった。
正しいものが勝ってくれるとうれしいのだが、実際はそうならないことも多い。
録画・再生システムとしては、ベータ方式が優れているといわれながら、VHSが圧勝した過去。
また、「技術的に優れたものを作れば売れるはずだ」という哲学で経営してきた日本の家電メーカーが、韓国のサムスン、LGに完膚なきまでに叩きのめされている現実。
水島の話を聞きながら、こういう大きなくくりで、いつか番組にしてみたいなと思った。
タイトルは「敗者の言い分」
それはともかく、「親指シフト」が優れていることを知ったうえで、ローマ字入力をするのは、ある意味、屈辱的だった。
でも、世の中の流れには逆らえないのかなと割り切った。
ところが水島は、今も親指シフトでやっているという。聞くと、糸井重里高橋源一郎姫野カオルコなどもユーザーで、「親指シフト・キーボードを普及させる会」まである。
http://www.oyayubi-user.gr.jp/index.htm
水島も賛同人で載っていた。
過去が蘇り、よし俺も立ち上がろう!とがぜん盛り上がった。
親指シフトのパソコンが売っている「アクセス」という店を水島から教えてもらったので、今度ぜひ行ってみよう。
http://access-fs.com/

親指シフトに再び栄光を!