中国の対話再開は目くらまし

 きょう聖火が日本に到着し、たくさんのテレビカメラが追いかけている。そこに、「中国政府がダライラマ側との対話に応じる」とのニュースが入ってきた。
北京五輪開会式ボイコットを呼びかけている「国境なき記者団」(本部・パリ)のロベール・メナール事務局長(55)が25日に来日した。26日の長野市での聖火リレー中に集団で抗議活動をする予定。ただ、中国政府とダライ・ラマ14世側との対話が実現すれば、リレーへの抗議を終わらせる意向も示した。(略)
 新華社通信は25日、中国政府がダライ・ラマ14世の代表と会うと報じた。会見中に知ったメナール氏は「ブラボー」と喜んだ上で、「対話実現なら、キャンペーンをやめる準備がある。キャンペーンそのものが目的ではないのだから」と語った》(アサヒ・コム
 しかし、対話に応じるというのは中国の単なるポーズであり、目くらましにすぎない。会うだけで国際的非難がおさまるなら、おやすい御用だ。いま中国とダライラマ側が対話しても、何の進展もないだろう。ちっとも「ブラボー」じゃないよ。
 事実、新華社によれば、中国側の対話再開は無条件ではない。「祖国分裂活動の停止」「北京五輪妨害・破壊活動の停止」などを出してきて、対話に向けた環境を作るようダライ・ラマ側に要求している。
 中国の人権弾圧は五輪を前にむしろ強まっている。きのうの続きになるが、中国は延吉省で、脱北者の「一掃作戦」をはじめた。密告奨励金を脱北者一人当たり8000元(約11万円)とこれまでの報奨金500元の16倍へとアップしたほか、さらに各種の新たな弾圧策を取り始めた。
《中国政府は、多くの脱北者が身を潜める延辺地域のキリスト教会への監視を強化している。韓国や米国からの宣教師が建てた教会のうち、すでに一部が強制閉鎖の対象に挙げられている。
 中国政府は、中朝国境地帯での鉄条網設置も進めている。脱北者流入を防ぐためだ。延辺朝鮮族自治州の図們市の中朝国境地帯など、豆満江沿いの一部地域では、最近になって新たに鉄条網の設置が進んでいる。豆満江の鉄条網設置を担当した中国側の関係者は、「金正日政権も今回の鉄条網設置に資材を提供するなど積極的に協力している。鉄条網を完成させて警備を強化し、中朝間の密輸や脱北を防ごうとしている」と語った。北朝鮮難民救援基金の加藤博事務局長は昨年12月、「ボイス・オブ・アメリカ」とのインタビューで「中国では最近、図們市から三合市に至る20キロの地域で鉄条網が新たに設置された」とし、鉄条網の設置が広範囲で進んでいることを示唆した。
 中国内の脱北者を国外に出さないための対策も進んでいる。中国政府は4月から、韓国国内に住む元脱北者へのビザ審査を大幅に強化した。元脱北者らは、訪中の目的と訪問先、出入国の日付と人的事項を徹底的に調べられる。事実上ビザ発給は停止した状態だ。韓国に住む元脱北者の中には、中国国内で家族や知り合いと落ち合い、韓国に連れて帰ってくることを目的に中国入りを希望する者が絶えない。
 脱北者の救出運動をしている元脱北者Aさんは「中国政府は今、中国国内の脱北者たちを追い詰める政策を進めている。韓国政府は中国に対する卑屈な態度を改め、堂々と自国民保護に乗り出さなければならない」と訴えた》http://www.onekoreanews.net/past/2008/200804/news-seiji01_080423.cfm
 脱北は北朝鮮人民が追い詰められて行なう緊急避難である。これを取り締まり北朝鮮に強制送還することは彼らの命にかかわる。
 かつて中国は、カンボジアで虐殺集団ポルポト派を全面的に支援した。そのことに何の反省もないまま、いま北朝鮮人民の命を踏みにじる政策を進めている。
 この国でオリンピックが開かれることは世界の恥だが、オリンピック開催は、中国の人権問題を世界に知らしめる効果をもたらしている。