中国の国民は、海外からの批判に激昂して反発を強めている。愛国主義に燃えて盛り上がっているようだ。悪いのは中国以外の国々、つまり残りの世界全部というわけだ。各国の聖火リレーには留学生が集まり熱狂的に応援している。中国の権力者たちはこの事態を喜んでいるかもしれない。
パリ市議会がチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世を「名誉市民」にした。フランスががんばっているが、フランスの小売大手「カルフール」は中国で不買運動を起こされ音を上げた。
《中国でインターネットの掲示板や携帯電話のメッセージを使ったカルフールへの不買運動が猛威を振るっているが、カルフールは17日までに、「事実でないうわさが流れている。北京五輪を積極支援し成功を願っている」とする声明を発表、事態収拾へ理解を求める異例の事態になった。(略)
中国共産党機関紙、人民日報によると、中国外務省の報道官は「これら(不買運動)はみな原因あってのものであり、仏側はよく熟考し再考すべきだ」などと表明。聖火リレーの妨害事件など仏側に責任があるとして、カルフールなど仏側の主張を切り捨てている。》(フジサンケイビジネスより)
中国は世界を露骨に恫喝しはじめた。オリンピックを妨害すべきでない、どの国も「国益を考えるべきだ」と。こんなことを言われたら、ほとんどの国は震え上がる。主要国はみな、中国を相手にしなくてはやっていけないところまできている。このままでは、いくら市民レベルで抗議運動が高まっても、オリンピックボイコットなどには発展しないだろう。
だが、だからといって抗議の声を弱めてはならない。
ここにきて、北朝鮮の人権を掲げる団体が中国への抗議に加わってきた。脱北者への連帯行動を長野でやるという。
《4月26日は長野市で北京オリンピックの聖火リレーが行なわれる日ですが、奇しくもこの日は、北朝鮮から中国に逃れてきた脱北者の人権侵害を啓発する世界的な統一行動の日です。北朝鮮難民救援基金は、統一行動を今年は長野で行なうことにしました。中国政府に生命と人権を尊重することを訴えるためです。チベットでの容赦のない弾圧、新彊ウイグル自治区での民族浄化政策、内モンゴルでのモンゴルの自治権の抑圧、中国国内の人権弁護士や民主活動家の逮捕、拘留、また、強制送還によって起きている北朝鮮難民の生命の危機など、見過ごしに出来ない人権侵害問題があります。》
いま、脱北者への弾圧が酷いという。「北朝鮮難民救援基金」は、中国吉林省延吉発で、以下の記事を発表した。
《北京オリンピック前に脱北者の一掃作戦
チベットの暴動に関して、背後に宗教を通じた外国勢力の干渉があると見ている中国政府は、各省の宗教局を通じて、外国人との関係の一斉調査を命じた模様だ。
4月7日、北朝鮮難民救援基金に中国から届いた情報では、延辺朝鮮族自治州内のキリスト教会で、韓国を初めとする外国人の関与のある教会が整理、閉鎖の対象になっている。在米キリスト教会ら100万元の支援を受けて建設中の教会は閉鎖命令を受けた。
また、北朝鮮からの脱北者に保護を与えた者は、以前よりも厳しい処罰が、課せられることになった。これまで罰金で済んだものが、刑事罰として懲役刑に処せられると警告を受けている。そのため、脱北者の支援、保護に関わった人たちの間に、脱北者との関わりを敬遠するようになっている。
一方で、自治州政府は、安全局、公安局、宗教局に対し、脱北者の密告を奨励するために口頭による指示を出している。
延辺朝鮮族自治州政府宗教局の関係者によれば「密告奨励金を一人当たり8000元以上を出す」と明らかにした。
この金額は、およそ1年分の収入に相当するもので、当局がいかに力を入れて、脱北者や保護に関わる支援者を一掃しようとしているかが伺える。
この情報は、既に噂として脱北者を保護するシェルターにも知られており、少なからぬ動揺を与えている。脱北者の一部はシェルターを離れ、安全確保のために第三国を目指すものも現われた。》http://www.asahi-net.or.jp/~fe6h-ktu/topics080409.htm
中国当局は、以前から脱北者狩りをしては強制送還をしてきたが、1年分の年収相当の密告奨励金を出すとは尋常ではない。中国はオリンピック開催を機に、より開かれた社会になると公約したのに、実際は逆で、オリンピックを前に人権弾圧をより強めている。
中国には強いメッセージを送り続けるしかない。