ジャーナリストの安全はTPOで変わる

きょう、無印良品有楽町で、カンボジアで「クメール伝統織物研究所」を主宰する森本喜久雄さんの講演会を聞いた。
十数年前に、彼が一時帰国したときに会ったきりで懐かしかった。講演会のあと、お茶を飲んで旧交を温めたが、森本さんの話に非常に触発されるものがあった。
これはいずれ書く。
なお、650円の草木染のタオルは、ガイアの夜明けの放送翌日一日で売り切れ、きょうは11月入荷の予約を取っていた。近く、ヨーロッパの無印良品でもプロモーションが始まるという。すごいことになってきた。
・ ・・・・
前回の続き。
戦場では、国籍によって安全度が違うことがある。
ベトナム戦争の取材では―
《日本人ジャーナリストたちは、旅や従軍する時は日の丸をザックの底に入れておいたものだ。岡村昭彦も、開高健も、日の丸の旗に「日本の記者だ、殺さないで」と、ベトナム語で書いたものを携帯している》(平敷安常『サイゴン・ハートブレイク・ホテル』P234)
この一節は、日の丸をつけることに嫌気がさして、はがした記者、毎日放送の森田泰正について書かれた文章だが、ベトナムでは「日本」を前面に出した方が安全だった。
また、安田純平さんによれば、シリアでは、反政府側の地域では「日本人」が、政府側の地域で中国人が有利だという。
《今回訪れたシリアでは、新たに人に会うたびに「中国人か?」「中国人なら追い返す!」などと言われ、そのつど「日本人だ。中国人なら反政府側のここには来ないだろ」などと言い返さなければならなかった。(略)
内戦状態が続くシリアについて、アサド政権に対する制裁などを盛り込んだ非難決議案が国連安全保障理事会に何度も提出されたが、中国はロシアとともに拒否権を行使し、いずれも廃案に追い込んだ。08年の中国におけるチベット騒乱ではシリアは「一連の破壊活動は民族団結への打撃と北京五輪妨害を狙っている」などとチベット人側を非難し、中国を擁護している。“似たもの同士”がかばい合っているような構図だ。
シリアでは一日中テレビをつけて衛星放送のニュースを見ている人も多く、中国政府のこうした姿勢はよく知られている。政府軍の物量にまかせた空爆・砲撃で被害が拡大している反政府側からはアサド政権を支援する中国に対する怨嗟の声も上がっている。そもそも日本人を見たら「ジャッキー・チェン」と言う人々である。それっぽい顔の人間が現れればみな中国人に見えてしまうのもやむを得ないだろう。
通りですれ違ったシリア人が「中国人だ」と言っている声が後ろから聞こえてくることもある。例えばイラクでは、日本は米軍側についたが中国は侵攻に反対したので、街なかで「中国人」との言葉が聞こえても悪い意味で言われている感触はなく放置していた。しかし今回はそうもいかず、振り返って「日本人だ」と言う必要があった。うわさ話が広まるのは早いので、良くない誤解はできるだけ早く解消しておかなければならない。それだけに、こちらが日本人と分かったときの歓迎ぶりは際立っている。ヒロシマナガサキは誰もが知っているし、日本への印象は非常に良いのだ》
http://getnews.jp/archives/247488
安田さんは、2004年のイラクで、武装勢力に拉致・拘束された。そのとき、彼は、日本はアメリカ側についたから敵だと武装勢力に言われた。
これは国籍の話だが、ジャーナリストという身分をさらすことについても、安全な場合と危険な場合がある。幹線道路を進むべきときがあれば、裏道の方が治安がよい場所もあろう。
安全か危険かはまさにTPOで変わる。安全確保にとって最も重要なのは「情報」である。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20070929
最近の中国との危機を見ると、国家の安全保障においても、軍備というハードよりも「情報」というソフトが重視されなくてはならないと痛感する。
(つづく)